<DeNA2-5広島>◇8日◇横浜

 一足早く、コイの季節が到来した。広島のドラフト1位ルーキー野村祐輔投手(22=明大)が、セ・リーグ新人一番乗りで白星をゲットした。DeNA戦で8回を5安打無失点、無四球6奪三振の、ほぼ完璧な投球を披露。連続イニング無失点の球団記録(79年の34回)を39回に書き換え、チームを昨年5月8日以来の首位に押し上げた。

 野村は新人とは思えないほど落ち着き払ったマウンドさばきだった。最速145キロの速球にカーブ、スライダー、チェンジアップを低めに集め、DeNA打線を手玉にとった。2回と3回、そして8回に得点圏に走者を背負ったが、それ以外は危なげない投球。完投、完封こそ逃したが「しっかりと試合をつくれたのがうれしい。後半きつかったですが終わってほっとしました」と、プロ初白星を冷静に振り返った。

 首脳陣は、絶賛するしかない。野村監督は「1点なんてないようなものなのに、本当によく投げてくれた」と言えば、大野投手チーフコーチも「見事な投球。全ての球種で勝負できるという持ち味を出してくれた。安心して見ていられたよ」。連続イニング無失点の球団記録も、33年ぶりに39イニングに更新する快投に、賛辞を惜しまなかった。

 入団会見で、野村は言った。「速球派だとか技巧派だとかのタイプはつくりません。球種や制球、フィールディングなど、どれをとってもトップレベルの投手になりたい。何かが劣るのはイヤなんです」。

 広陵高時代、夏の甲子園決勝で優勝を目前にしながら佐賀北に逆転満塁弾を浴びた。勝ちきれなかった悔しさを晴らすため、自分の長所と短所を明確にした。球威不足を解消するため、大学では体重増に挑み約10キロの増量に成功。体の左右のバランスをとるためのトレーニングに取り組み、精神面も成長させた。明大4年時の明治神宮大会では大学日本一も達成した。プロでは、投手としての理想型に近づけるのが目標になる。この日の1勝はその最初の1歩だ。

 好調な流れを野村がさらに加速させ、6連勝でチームは昨年5月8日以来の首位に立った。「プロでやれるかというより、やらないといけない。まだ開幕したばかり。自分の投球をしたい」と早くも主軸投手のムードをかもし出す。黄金ルーキーが、快進撃の大きな力となる。【高垣誠】