<中日2-2阪神>◇2日◇ナゴヤドーム
ついに止まった。止めたのはクレイグ・ブラゼル内野手(31)だ。5回に右前適時打でチームの連続無得点イニングを35でストップ。自身の連続打席無安打も「15」で止めた。それでは足らんとばかりに、7回に左翼フェンス直撃の二塁打、9回に左前打を重ね、今季初3安打の固め打ち。勝てなかったけど、負の連鎖は確かに断ち切った。
ブラゼルが「0」の呪縛を打ち破った。己を、打線を、チームを縛っていた鎖を断ち切った。5回、連続無得点は35イニングまで伸びていた。1死から一、二塁という好機がめぐってきた。ここで打席に立ったのは15打席連続無安打のB砲。重苦しい空気が流れた。打破できるのは結果のみ。
フルカウントからの7球目。中日中田賢140キロの直球をフルスイングした。打球は右翼へ。願いを乗せた白球が人工芝に弾んだ。金本が二塁から激走した。36イニングぶりの得点だ。待ちわびた虎党が喜びを爆発させた。
「ここ数試合、点数が取れていなかったので何とかしたかった。自分としても久しぶりのヒットが、いい形でタイムリーになって良かった」
その身をしばっていた鎖は完全に振り払った。7回には外角球を力で持っていった。高く上がりながらも、ぐんぐん伸びた打球は左翼フェンス上部に「ドスンッ!」。あと数十センチでスタンド・インという特大の二塁打だった。9回にもブラゼルシフトの逆をつく、痛烈な左前打で今季初の猛打賞を記録した。打率まで沈んでいた大砲がど派手な復活ショーだ。
不振のため、5番から6番、そして6番から7番へと打順を下げられた。前日の試合では1点を追う9回に代打を送られた。悔しさがないはずもない。ただ、この日も黙々と打撃練習をこなした。己の仕事に没頭した。開幕前、和田監督から伝えられたことがある。
「思い切り振ってくれ。フルスイングしてくれ」
長打力がありながら、軽打で率を残せる器用さがあると評価される。だが、相手を威圧するフルスイングこそ、ブラゼルの最大の魅力。指揮官は明確に起用の意図を伝えてくれた。ともすれば、無安打が続けばバットが振れなくなりそうなものだが、ブラゼルはどん底の状況でも信念のフルスイングを貫いた。
試合前の打撃練習では、片岡打撃コーチが普段より、さらに前から打撃投手を投げさせた。速球に負けず、スイングにキレを取り戻すための工夫。全員の力を結集して壁を打ち破った。
「自分もベストを尽くしてやっていくしかない。また、前を向いて、明日から戦っていく」
試合後、ブラゼルは険しい表情のまま言った。受けた借りはこんなものではない。ブラゼルと、猛虎打線の逆襲が始まる。【鈴木忠平】



