広島前田健太投手(24)が7日、ルーキー野村祐輔投手(22=明大)と「男の約束」を交わした。新人ながら防御率リーグトップの野村が今季10勝すれば、オフにハワイ合同自主トレに連れていくというもの。ルーキーの要望を快諾し、新人王レースをひた走る右腕にハッパをかけた。

 ひょんなことから、話が進んでいった。今やローテの軸となっている野村が、阪神での金本賞の存在を知り「たられば」を口にしたことが発端だ。後輩の奮起を期待した金本が、ノルマを設定しクリアすれば100万円以上の時計がプレゼントされるニンジン作戦。興味を示したルーキーは、自らに当てはめて考えた。

 野村

 (ノルマは)10勝ですかね。ハワイに行きたいです。というか、アメリカに行きたいです。

 開催が実現すれば主催者は前田健だ。エースを尊敬する野村にとって、ともに合同自主トレを行うことは、トレーニング以外でもエースの野球観を吸収できるチャンスとなる。アメリカは高校、大学時代に日本代表としてプレーした思い出の地。鮮烈な印象を、今でも忘れられない。そんなルーキーの思いを、前田健はガッチリ受け止めた。

 前田健

 もともと、自主トレを一緒にやろうというのはあった。今年は1年目だったし、環境とか用具面も大変なところがある。でも、僕もハワイは好きなので、そのときが来たらですね。

 春季キャンプ中に1歳年上の前田健は、松田オーナーから直々に野村の「指南役」に任命された。「タイプ的にも、自分に似ている」と、それ以来プロのいろはを伝えるために、ともに行動してきた仲だ。後輩の活躍は、自身にとっても大きな刺激となっている。

 野村は前日6日に、防御率1・10でリーグトップに躍り出た。白星は2つながら、登板6試合すべてでクオリティースタート(6回以上3失点以下)をマークし、抜群の安定感を誇っている。新人王レースを独走中で、2ケタ勝利の現実味は十分だ。

 一方の前田健も、リーグトップタイの4勝を挙げエースの威厳を保っている。ルーキーに成績を上回られるわけにいかない。前日5日のお立ち台では「カープは心1つに必ず上がります」と再浮上を誓った。ローテの柱となる2人の「約束」が、チームを活性化させる。【鎌田真一郎】

 ◆金本賞

 06年11月に井川のメジャー移籍を受けて、金本が投手陣の発奮を促すためにスタート。安藤や福原に目標を設定してクリアすれば高級腕時計、最低ノルマ(10勝)未満なら丸刈りとするルール。最低ノルマを達成できなかった安藤は、09年オフから2年連続で丸坊主となった。