<ヤクルト9-5阪神>◇1日◇神宮

 これがヤクルト田中浩康内野手(30)の「坂道発進打法」だ。1点差に迫った直後の6回1死二、三塁、2ボールから、阪神加藤の真ん中140キロ直球を無心で振り抜いた。体全体のパワーを乗せた打球が、左翼席に伸びる。「興奮して全然記憶にないんです。後悔しないように、思い切りバットを振った」と喜んだ。2点先取した直後に5点を失う重い展開の中で、再逆転劇の主役になった。

 前日は5打数無安打に終わり、打率は規定到達者リーグワースト2位の2割2分5厘まで沈んだ。10年には3割をマークしたが、数字に悩む日々。「コーチや先輩、後輩がいろいろアドバイスしてくれるんです」と受け止めた。伊勢孝夫総合コーチ(67)からは「坂道発進や。免許の時にやったやろ」と珍アドバイスが届いた。

 その心は。「サイドブレーキを一気に解くんじゃなくて、ゆっくり下ろせということ」(田中)。体にためたエネルギーを、一気に解き放つのではなく、軸足にためて、間をつくる。同コーチは「軸足から一気にいくんじゃなくて、ゆっくりといけ」と説いた。

 新打法で、開幕2戦目以来の今季2号。小川淳司監督(54)は「意外性の1発。誰も予想も、期待もしていなかった」とたたえた。本塁打直前、阪神は安藤から左腕加藤にスイッチ。ブルペンでは左右2投手が準備中で「思っていた方とは違った」と言った。軽く見られたとまでは思わずも、集中力は高まった。

 これで打率は2割3分としたが、離脱中の広島広瀬が規定打席を割ったため最下位になった。「次の打席で数字を見て現実に戻りました。これからです」。劇的本塁打を、浮上のきっかけにしたい。【前田祐輔】