<西武9-5楽天>◇8日◇西武ドーム

 2年目の西武大石達也投手(23)が、プロ初勝利を挙げた。楽天戦2点ビハインドの5回1死一塁で登板し、1回2/3を無失点の好投。6回裏にチームが逆転し、白星をつかんだ。10年ドラフトで6球団競合の末に、西武に入団。初勝利では早大同期の日本ハム斎藤、広島福井らに先を越され、思い悩む時期もあったが、もがき、苦しんだ末に歓喜の瞬間が訪れた。

 お立ち台に上がった大石の目に涙はなかった。10年ドラフトから619日。苦しんだ過去が脳裏をよぎっても、あの時と同じ爽やかな笑顔だった。「本当にうれしいですね、はい。まだチームの勝利に貢献できていなくて、イマイチな感じですけど、勝てて良かった」。初のお立ち台に緊張感は最高潮だったが、大石らしく今の思いを自分の言葉で伝えた。

 「ハンカチ世代」と言われる中、新人王の最有力候補で入団した。早大時代は抑えだったが、先発に配置転換。それでも、周囲が期待するのは、最速155キロの剛速球で押しまくる姿だった。常につきまとう「最速」の言葉。最大の武器と認める直球には自信はあったが、キャンプ、オープン戦を経ても、大台には届かず。新たな境地に挑戦する青年には、重い十字架に変わった。

 同期の仲間たちが1軍での1歩を踏み出す中、生まれる焦りと不安。「野球人生でこんな経験は初めて」と振り返るほど、悩み、苦しんだ1年だった。四六時中聞かれる「同期の活躍は刺激になりますか」の言葉。「自分は自分なんで。今は自分のこと以外、考えている余裕はないです」。雪辱の2年目、闘う相手を自分に変えた。それを示すように、試合後は「自分」という単語を繰り返した。

 変えたのは思考だけではなかった。5月中旬、知人を通じ、「iPad」に早大時代の投球フォームと動作解析ソフトをインストール。画面上に自身の投球フォームを映し出し、チェックポイントにラインを記入。自分のイメージと投球フォームの違いを映像でチェックし、普段のトレーニングや練習に取り入れた。この日は最速142キロだったが「困ったら真っすぐ」。「最速」に苦しむ姿は、そこにはなかった。

 試合後、携帯を開くと、日本ハム斎藤から祝福メールが届いていた。「うれしいですね。福井には僕から電話をかけます」。ウイニングボールはロッカーに置いたまま。「7、8、9回。どこでもいいので、勝ち試合に投げられるようになりたい」。第1歩を踏み出した大石の目指す頂は、もっと先にある。【久保賢吾】