<楽天0-2日本ハム>◇15日◇Kスタ宮城

 7投手の無失点リレーで緊急事態を乗り切った。日本ハムは、先発八木が8球で危険球退場した後、2番手の矢貫俊之(28)、3番手の森内寿春(27)ら7人の継投で楽天に完封勝ち。2年ぶりのプロ2勝目を挙げた仙台育英出身の矢貫と、JR東日本東北出身の森内という仙台にゆかりのある右腕2人を軸にゼロを並べ、首位を守った。

 ブルペンでモニターを見ていた矢貫の肩は、冷えていた。先発の八木が1回、打者2人、わずか8球で危険球退場による降板。出番は、突然だった。「何もしてなかったです。めちゃめちゃ緊張しました」。すぐに数球のキャッチボール。投球練習は1球もしないまま、アクシデントでスタンドがざわめくグラウンドへ、駆けだしていった。

 だが、肝っ玉は、座っていた。「強い気持ちを持って投げました」。先頭の枡田に内野安打を許したが、動じることなく後続を抑えると、3回までに許した安打はこの1本だけ。「先発をやっていたとき、どうだったかなと思いながら投げた」。肩が温まった3回には、149キロをマークし、3つのアウトをすべて三振で奪った。

 続いてマウンドに上がった森内も2回打者6人をパーフェクト。「流れを切りたくなかったです」。結果的には投手7人の継投で無失点。栗山監督は「ウチがここまで来ている(首位)のは、中継ぎの頑張りがあるから。ある意味、典型的なゲームだった」と、目を細めた。

 2人の原点が、ここ仙台にある。矢貫はこの日甲子園で2回戦を突破した、仙台育英の出身。当時はベンチ入りすらできず、アルプススタンドでは太鼓をたたいていたが、苦労を重ねた思い出の地で、2年ぶりのプロ2勝目を挙げた。「高校の時、投げられなかった舞台で投げられた。成長というか…」と笑った。前日14日には、小学生時代に所属したスポーツ少年団の関係者約40人を招待していたが、この日のスタンドに知人はゼロ。運の悪い“ニアミス”にだけは、苦笑いを浮かべた。一方の森内も、JR東日本東北の職員として勤務した場所。東日本大震災の後は、野球の練習ではなく、業務に没頭し、思い入れの深い土地だ。

 “本拠地”で投げた2人の活躍が、試合序盤に訪れたアクシデントを乗り越える原動力になった。不完全燃焼だった八木だけではない。連敗中だったチームも、救われた。【本間翼】

 ▼先発八木が初回に危険球で退場した日本ハムが7人の継投で完封勝ち。先発投手が危険球で退場しながら完封勝ちは、08年5月23日日本ハムが中日戦で記録して以来5度目。いきなり先発投手が初回に退場は15度目だったが、その試合で勝ったのは09年7月30日ソフトバンク以来4度目。初回に退場で完封勝ちは初めてのケースだ。7投手の「完封リレー」は今年7月18日DeNAが記録しているが、日本ハムでは8投手で完封した80年6月30日阪急戦以来、32年ぶりになる。なお、先発投手が2人目に危険球は、11年9月19日大場(ソフトバンク)以来6度目のスピード退場。