<巨人4-3広島>◇19日◇東京ドーム

 サヨナラ男の本領発揮だ!

 巨人阿部慎之助捕手(33)が、同点の9回に広島の守護神ミコライオから右中間にサヨナラ16号ソロを放った。この日は一塁で先発。初回に失策から失点されたが、適時打に通算6本目のサヨナラ弾と、バットで帳消しにした。両足首痛と闘いながら主将がチームをけん引し、同一カード3連勝。貯金は今季最多の30で、敗れた2位中日とのゲーム差も5・5に広げた。

 自分のケツは、自分で拭く。これが阿部だ。9回、広島の守護神ミコライオの力強い直球を、右中間にはじき返した。東京ドームが熱狂する中、表情を変えず淡々と、ゆっくりベースを1周した。「僕が最初に足を引っ張ってしまって何とかしようと打席に入りました」。仲間に水を掛けられ、原監督に抱きつかれると、ようやく表情が和んだ。

 初回にケチがついた。1番・丸の何でもない一ゴロをはじいた。一塁から振り返り「E」ランプを見つめた。その直後2失点。申し訳なさ、悔しさ…。一塁手での失策に、捕手とは違う心境に襲われた。3回にも一塁けん制を捕球できず三進まで許し犠飛を食らった。記録は投失だが「おれのミス」と認識していた。

 借りはバットで返す。1打席目から決意が表情に表れた。1回に殺気だった雰囲気で弾丸ライナーの安打を、3回には適時打を放った。だが、笑顔はなし。7回無死二塁での右飛で「全く仕事ができていない」と集中力を再び極限に高めた。「できる範囲でチームに貢献したいと思っていたので良かった」。失策を取り返したかったかとの問いに、即行うなずいた。「野手の気持ちがすごく分かるよね」と、ホッとした表情で汗をぬぐった。

 満身創痍(そうい)でもあった。両足首痛で、18日の8回には両手で「×」をつくって本塁生還した。試合後は左足に消炎剤の注射を打ち、この日は痛み止めを服用。加えて契約するアンダーアーマー社が米国から取り寄せた、足首を保護するハイカットで軽量の新スパイクを前日から履いた。それほどの勝利への飢えも劇的弾の下地にあった。

 貯金は30。だが、「9月に入って残り20試合ぐらいからが勝負。目先の1試合を取っていく」と緩みはない。「名古屋で負けて、みんな悔しい思いで帰ってきた。それを3連勝にぶつけられたんじゃないかな」。やられたら倍返し。その積み重ねが62勝32敗だ。【浜本卓也】

 ▼阿部のサヨナラ本塁打は、07年にこの日と同じ8月19日ヤクルト戦で館山から満塁サヨナラ本塁打を記録して以来、通算6本目。サヨナラ安打は通算11本目だが、本塁打は6本のうち4本、安打も11本のうち6本を8月に記録している。巨人のサヨナラ本塁打ランクは(1)王8本(2)長嶋7本(3)二岡、阿部6本で、サヨナラ安打ランクは(1)王15本(2)長嶋14本(3)原12本(4)川上、阿部11本。本塁打は二岡に並ぶ3位、安打は川上に並ぶ4位に進出した。