<ヤクルト1-7阪神>◇19日◇神宮

 これぞ神通力!

 同点とされた直後の9回表、代打の神様・阪神桧山進次郎外野手(43)がヤクルト守護神バーネットから決勝暴投を呼び込んだ。さらにミスに乗じて好機を広げると、それまでの拙攻がウソのように5連打まで飛び出した。神様の御利益で今季最多の1イニング6得点。自力CSまで再復活するとは、ありがたや~。

 あれほど遠かった1点が思わぬ形で転がり込んだ。同点の9回2死三塁、代打の切り札・桧山の登場にスタンドが沸いた。ヤクルトの守護神バーネットとの息づまる勝負。カウント2-2からの5球目だった。カットボールが桧山の足元でワンバウンド。三塁から平野が勝ち越しのホームを駆け抜けた。

 「オレは何もしていないよ。まあ、緊迫したゲームだったから先に勝ち越せてよかった」

 本人は苦笑いだったが、これが「代打の神様」と言われる男の神通力か。勝ち越しの後、桧山の打球は投手へのゴロになったが、これをバーネットが悪送球。二塁まで進むと、ここから上本、大和、鳥谷、新井良と3連続タイムリーを含む5連打。今季1イニング最多の6点が刻まれた。

 6回には無死満塁のチャンスで新井良、関本、新井が倒れて無得点に終わるなど、フラストレーションは最高潮に達していた。それが桧山の打席を機に、せきを切ったように流れが生まれたから、指揮官もうなった。

 「そりゃあ、桧山が打つと思ったからだよ。代打専門でやっている選手だし、状態も上がってきているから」

 和田監督は代打桧山について問われると当然とばかりに言った。ベンチには金本、ブラゼルも控えていた。それでも、指揮官の“直感”に迷いはなかった。前日にも代打で中前打を放っていた。勝負どころで鬼気迫る集中力を発揮する男は、相手に重圧をかけることができる。ヤクルトの自滅は決して偶然ではないだろう。

 「6回の満塁のところで1点でも、2点でも取れていればもっと楽な展開になる。最後のたたみかけるところでは、ガーンといくんだけど」

 勝利の後でも和田監督は課題を口にした。打線が追加点を奪えず、2回の1点で逃げ切ろうという展開で、8回に能見をリリーフした福原が同点とされた。またか…。嫌なムードが流れたが、何とか同点で踏ん張ると最後に爆発的な攻撃でたたみかけた。

 「追いつかれたけど、そこで止められたというのが大きい。きょうのゲームを教訓にして、粘り強く戦っていきたい」

 5カードぶりの勝ち越しで、自力でのCS進出の可能性が復活した。再び目に見える目標ができた。指揮官の言葉通り、勝利の女神を振り向かせる粘りがあった。猛虎は、まだ戦える。【鈴木忠平】

 ▼阪神が9回に6点を挙げ快勝。1イニング6得点以上は今季初で、11年10月14日ヤクルト戦(神宮)の6回に6点を取って以来。最終回に限ると、10年6月22日広島戦(米子)の11回、7-7の同点からマートンの満塁本塁打などで6点を奪って以来、2年ぶり。