<阪神2-5中日>◇22日◇京セラドーム大阪

 守道竜がまたも、巨人のマジック点灯を阻止した。こよいのヒーローは先発吉見一起投手(27)だ。中日では星野仙一以来、35年ぶりとなる5年連続の2ケタ勝利。今中慎二や山本昌、川上憲伸も成し得なかった快挙で、名実ともに「竜のエース」の称号を手に入れた。

 「内容はヒドイの一言です」。本人の苦笑通り、調子は最悪に近かった。制球も甘く、7回で浴びた11安打は今季最多タイ。5イニングで得点圏に走者を背負う苦しい投球だった。だが許した得点は2点だけ。勝負どころでの踏ん張りが、負けない投球を演出した。「こういう日もある。焦ることはなかった」。不調でも勝つ。負ければ巨人にマジック点灯だった一戦で、これぞエースの投球を見せた。

 今季の2ケタ勝利は大きな目標だった。「5年連続2ケタ勝って初めてエースなんだ」。落合前監督から、そう何度も叱咤(しった)されてきたからだ。だからこそ「エース」と呼ばれても、「まだ違う」とかたくなに拒み続けてきた。「落合さんからも5年やって、そうだと言われたので追い求めてやっていきたい」。昨季の投手2冠におごらず、強い決意で挑んだ“最終年”。ついに「エース」を戴冠する時がきた。

 「開幕当初から1つの目標だったので、達成できたのはよかった。通過点でありたい。でももっと早く勝っておかないと。うれしいけどだいぶ遅い。ケガなんかしてたらダメなんです」

 5月に左太もも裏の肉離れでリタイアした反省を踏まえ、厳しい言葉を並べた。だが1カ月半の離脱を挽回した10勝は竜投トップ。チームに阪神戦4年連続の勝ち越し&最多の貯金21をもたらせた。いよいよ次回は29日、盛岡での首位巨人戦だ。「もう負けられない立場にいる。しっかり調整して負けない投球をしたい」。優勝争いの天王山となる東北決戦。逆転3連覇へ再びエースの輝きを放つ。【松井清員】

 ▼吉見が今季10勝目を挙げ、08年から5年連続の2ケタ勝利。2ケタ勝利を5年以上続けたのは06~11年ダルビッシュ(日本ハム=6年連続)以来になるが、中日で5年以上は73~77年星野仙以来35年ぶり。中日投手の連続2ケタ勝利は50~58年杉下の9年連続が最長で、5年連続は46~50年服部、65~69年小川、72~76年松本、73~77年星野仙に並ぶチーム2位。