<巨人2-1DeNA>7日◇東京ドーム

 巨人坂本勇人内野手(23)が今季最終戦で3安打を放ち、同僚・長野久義外野手(27)の173安打に並び、最多安打のタイトルをほぼ手中に収めた。坂本は6年目で初の打撃タイトルとなる。1番に打順を変更させた原監督の配慮にキッチリ応えた形だ。

 坂本の感情がこみ上げてきた。7回に3安打目を放ち、最多安打数で1位の長野に並んだ。その後1死二塁で、打順は長野。ここで打てば2位に後退するが、「打席に行くならしっかり打ってほしい」と安打を心から願っていた。だが、代打でベンチへ引き返した。この瞬間、2人の最多安打獲得が決定的となった。

 本当は長野さんは打ちたかったのではないか-。そう思った視線の先に、笑顔でガッツポーズする長野がいた。ダブル受賞を心底喜んでくれている。「それが一番うれしかった。同じ右打者で、見て学ぶことが多かった。その長野さんと一緒に取れたのがうれしい」と心が震えた。塁上では、目を手でぬぐっていた。「汗が垂れていたんです、本当に」と笑った。汗が歓喜の涙に見えるほど表情は喜びでいっぱいだった。

 試合前まで3本差。「正直厳しいなと思っていました」が本音だった。だが、打席が最も多く回る1番起用が決まると「全力を尽くしてやってみよう」と腹を決めた。5回には本塁生還時に左手甲を踏まれたが「プレーに支障はない」と出続け、3本目はその左手をいっぱいに伸ばして外角直球を右前へ運んだ。厳しい状況から、長嶋茂雄氏と並ぶ今季20度目の猛打賞で、トップをつかみとった。

 小学時代、1メートル置きにヘルメットをジグザグに置いての50メートル×10本ダッシュがあった。坂本はタイムが1位でないと「もう1回!」とおねだりしたという。所属した少年野球チーム「昆陽里(こやのさと)タイガース」の山崎三孝監督(67)は「とにかく自分が『1番』にならないと気が済まない子だったね」と懐かしんだ。

 「1番」への思いが誰よりも強かった少年は、この日、セ・リーグで最も多く安打を放った選手となった。「素直にうれしいです」。プロ入り後初めて、個人記録での「1番」を手にした。【浜本卓也】

 ▼坂本が3安打を放ち、長野に並びリーグ最多の173安打とした。リーグ最多安打が並んだケースは08年パ・リーグの片岡(西武)と栗山(西武)まで過去8度あり、巨人の選手が並ぶのは69年王と長嶋以来。69年は最終戦を前に王、長嶋と藤田平(阪神)の3人が154安打で並んでいたが、最終戦で王、長嶋がともに2安打して2人で分け合った。坂本の猛打賞は今季両リーグ最多の20度目。巨人で猛打賞をシーズン20度以上は、52年与那嶺22度、02年清水22度、50年青田21度、53年川上21度、04年清水21度、63年長嶋20度に次いで6人、7度目。