<パCSファーストステージ:西武1-2ソフトバンク>◇第1戦◇13日◇西武ドーム

 ソフトバンクがセットアッパー森福允彦投手(26)の快投でファイナルステージ(S)進出に王手をかけた。西武とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦は接戦。2-0で迎えた9回、2番手ファルケンボーグの乱調で無死満塁の大ピンチで登板した森福は、打者3人をわずか9球、内野ゴロによる1点に抑えた。昨年の日本シリーズ第4戦でも無死満塁を抑えた「森福の11球」を再現するようなミラクルセーブだった。

 西武ファンが打ち振る青い旗がピタッとやんだ。波の消えた“大海原”の真ん中。171センチの森福が左こぶしを握って仁王立ちした。1点差に迫られた9回2死二、三塁。代打高山の飛球は右翼中村と交錯しながら中堅城所のグラブに収まった。「やりました。緊張しましたねえ」。西武の逆転機をひねりつぶし、緊張から解放された声は上ずっていた。

 2-0の9回。2番手のファルケンボーグが2四球に二塁打で、まさかの無死満塁。バックアップに指名されていた森福に出番がきた。「短期決戦ですから気持ちが大事。普段よりアドレナリンが出ました。最高潮に興奮しました」。脳裏には昨年の中日との日本シリーズ第4戦があった。1点リードの6回無死満塁で救援し、3人を11球で抑えた。「あの経験がありますから」とさらりと言った。

 最初の打者、代打カーターを1球で遊ゴロに打ち取るも、バウンドが高かったため、三塁走者の生還を許す。それでも「2点差だった分、1点でもOK」と余裕があった。上本と高山を飛球に打ち取り、9球で絶体絶命のピンチを脱出した。ファルケンボーグの乱調。おまけに米国で永住権手続きを行った守護神・岡島が時差ぼけで登板回避という、ブルペン陣の緊急事態も救った。

 その森福も6月、9月と2度の不振があった。「マウンドに上がるのも嫌で怖い。投げ方が分からなくなるくらい」。試合後、黒星を喫した無人の福岡ヤフードームのマウンドに戻り、投球練習したことも。「自分を信じてやるしかない」と弱気な自分にむち打って復調した。

 リーグ3位でのCS白星発進は球団初で、一気にファイナルSに王手をかけた。下克上での連続日本一へ。今年もソフトバンクに頼もしい「神」が降臨した。【押谷謙爾】