<パCSファーストステージ:西武8-0ソフトバンク>◇第2戦◇14日◇西武ドーム
瀬戸際に立たされた西武が、ファイナルステージ進出へ逆王手をかけた。前日の第1戦で1得点に終わった打線が、武田を3回途中5失点でKOした。左脇腹痛を抱えながら、強行出場を続ける中島裕之内野手(30)が2点目の適時打を放ち、一気にヒートアップ。この回一挙7点で試合を決めた。現行制度の方式が導入された04年のプレーオフからは、1イニング最多得点。眠っていた獅子打線が目を覚ました。
ベンチから身を乗り出すように拳を握るチームメートに、中島は笑顔でガッツポーズを返した。球場の雰囲気とともに、チームのムードも一変する。眠れる獅子打線が目覚めた瞬間だった。「ベンチからみんながやってくれてたんで、返そうと思ってね」。2点目の適時二塁打には、数字では示せない価値があった。
極限の集中力だった。3回1死一、二塁、打ったボールは1ストライクからの外角低め直球。一見すれば、難しいコースを代名詞と呼べる「流し打ち」で右翼の頭上を越えた。難しいボールだったのではとの問いかけに「分からん」と一言。心にあったのは「初回のチャンスで打てなかったので、何とか打ちたいという気持ち」だけだった。
左脇腹痛を抱えるが、周囲には痛みを隠してきた。状態を聞かれても「内緒。相手にばれるやん」と繰り返すが、本心は違う。優勝争いが佳境に入った頃、若手に「思い切ってやれ。重圧を背負うのは、オレとかでええから」と語りかけた。かつて、松井(現楽天)ら先輩に言われてきたように、チームの「盾」になる決意を表明。後ろ向きな話題は自ら消し去った。
中島の背中を追い続ける後輩も結果で応えた。3回は3四球に6安打を集め、一挙7得点。6点目を奪った直後の2死一、三塁からは今季初のホームへのダブルスチールで得点を奪った。4回無死一、二塁からは中島がノーサインでセーフティーバント。「後がないので、何とかしたい」気持ちをプレーに込め、中村の適時打を生んだ。
チームリーダーを中心に瀬戸際から、一気に盛り返した。渡辺監督は「あと1試合なんで全員で。全員使うくらいの気持ちでいく」とチーム一丸を強調した。「泣いても笑っても、明日には白黒がつく。僕らが勝てるように」との言葉で締めた中島。目覚めた獅子打線の中心には、重圧を一身に背負う男がいる。【久保賢吾】



