阪神が今秋キャンプに吉田義男氏(79=日刊スポーツ客員評論家)を臨時コーチとして招聘(しょうへい)することが14日、決定的となった。現役時代、華麗な遊撃守備で「牛若丸」の異名を取った名手に若手の成長を促してもらう。監督経験豊富な吉田氏の参加は新しくなったコーチ陣にとっても刺激になりそうだ。1985年、日本一に導いた元指揮官が猛虎再建のために立ち上がる。

 猛虎再建へ、日本一監督が立ち上がる。勝負の和田政権2年目、船出となるのは11月1日から予定されている高知・安芸での秋季キャンプだ。球団は再建への“秘策”として臨時コーチ招へいを検討中。白羽の矢が立てられたのは吉田氏だった。

 中村GMは14日、臨時コーチについて「ゼロではないが、まだ、披露する段階ではない。明日、社長とも話をする」と話した。吉田氏の招へいは近日中に正式決定し、発表される見込みだ。評論家として、また元監督として常に阪神の現場に携わってきた吉田氏だが、臨時コーチに就任すれば、鳥谷が新人だった04年春のキャンプ以来、8年ぶりとなる。

 球界史上NO・1遊撃手の呼び声があるほど、言わずと知れた守備の名手への期待が高い。金本、城島が引退して過渡期を迎えた猛虎だが、再建のキーワードの中には「若手育成」、「守備力強化」がある。今秋のキャンプは重要な意味を持つ。それだけに球団は、切り札とも言える吉田氏の力を必要とした。

 阪神の内野には後半戦から二塁スタメンに定着した上本、さらに三塁守備で課題を残した新井良、2軍では高卒新人の西田など将来性豊かな若手、中堅がいる。そんな選手たちの成長を促進するような助言、指導が期待されているようだ。

 また吉田氏は阪神の球団史上、唯一、3度の監督を経験しており、85年にはチームを日本一へと導いた。92年にはフランス代表の監督を務めるなど、指導者として幅広い知識を持っている。勝つための、チームを立て直すためのノウハウを熟知しており、新しくなった和田政権のスタッフにとってもキャンプが貴重な意見交換の場となりそうだ。

 就任1年目だった和田監督は1点を大切にする守りの野球を掲げながらも、ブラゼルを外野起用して攻撃型オーダーを組むなど徹しきれない部分があった。チームカラーは最後まで不透明。9月に就任した中村GMは広い甲子園を本拠地にする以上、あらためて「守りの野球」を実践していくことを強調した。

 今の阪神に“未来の牛若丸”はいるのか。育つのか。阪神が球界に誇る守備の達人が、逆襲への基盤づくりに一役買う。

 ◆吉田氏の臨時コーチ

 04年春の沖縄・宜野座キャンプ中に岡田監督の依頼で“臨時守備コーチ”を務めた。ルーキー鳥谷と藤本に華麗なグラブさばきを伝授。真剣に耳を傾けた鳥谷は「(早大時代は)アウトにすればいいという感じだった。前に出て捕る考えはなかった」と目からウロコだった。

 ◆吉田義男(よしだ・よしお)1933年(昭8)7月26日、京都府生まれ。山城高-立命大から53年に阪神入団。遊撃でベストナインを9度獲得するなど華麗な守備を誇り、牛若丸の異名をとった。69年に引退。現役時代の通算成績は2007試合、1864安打、434打点、打率2割6分7厘。75~77年、85~87年、97~98年と阪神監督に就任。85年には21年ぶりのリーグ優勝を果たし、日本シリーズでも西武を破り球団初の日本一に輝いた。背番号「23」は永久欠番。92年に野球殿堂入り。7シーズンにわたってフランス代表チームの監督を務めた国際派。昨年、国際野球連盟(IBAF)の五輪復帰委員会委員にプロ、アマ通じて初めて任命された。