<パCSファイナルステージ:日本ハム3-2ソフトバンク>◇第1戦◇17日◇札幌ドーム
まさかのと言っては失礼だが、息詰まる投手戦を演出したのはソフトバンク陽耀勲投手(29)の努力の結晶だった。この日の陽は150キロを超える直球に、145キロの落ちる球が決まり、投球自体も素晴らしかった。だが、最優秀防御率のタイトルをとった日本ハム吉川と互角の投げ合いができたのは、走者を出した際の対応にスキがなかったからだ。
5回、先頭の中田に安打を許し、初めての走者を出した場面だ。陽は何種類ものけん制を繰り出し、走者を進ませなかった。稲葉への初球の前には、一塁に山なりのけん制。続いて足を外すだけのけん制。さらには、足を上げてから、投げる直前に一塁を見て、そこから本塁に投げるという投球動作を用いて、中田を2度、塁に戻らせながら投球した。
プレートさばきのうまい投手ならば、すべては当然のことかも知れない。だが、陽はずっとセットポジションが課題だった投手。クイックもこの日は1・25秒で、まだ速いとは言えない。今季の被打率も走者が一塁にいる時が最も悪い。その欠点を自覚しているからこそ、やれることはすべてやったのだろう。
結局、5回の場面は日本ハムが中田にギャンブル的なスタートでの盗塁を命じて揺さぶりをかけてきたが、陽はしっかりと見ていて一塁に投げた。素早いけん制で走者を刺すのは苦手でも、走らせないことはできた。斉藤投手コーチは「あれも練習の成果が出せたから」と評価した。勝利にはつながらなかったが、WBC台湾代表の成長の跡が、はっきり見えた。【竹内智信】



