巨人阿部慎之助捕手(33)が、16、18日に行われるWBCに向けた強化試合「侍ジャパンマッチ2012・キューバ戦」の代表メンバーに入った。5日、都内で侍ジャパンのスタッフ会議が行われた。会議中に、山本浩二監督(66)から阿部へ電話があり、メンバー入りの要請を受諾した。右ふくらはぎの筋膜炎を発症し、本来なら回復に努めたいところ。だが「コージの直電」を意気に感じ、代表入りを即決した。8日から韓国・釜山で行われるアジアシリーズにも同行。鉄人に休息はない。

 アジアシリーズに向け、東京ドームで荷物準備をしていた阿部の携帯電話が鳴った。電話の主はWBC日本代表、山本監督だった。キューバ戦への誘いを受け、阿部は「監督直々に電話を頂いたことは光栄。何ができるか分からないけど、ひとまずオファーをもらった。チームにできることを率先してやりたい」と、爽やかな表情で明かした。

 「主将」としての役割は巨人だけにとどまらない。右ふくらはぎの筋膜炎を抱える阿部の使命は、日本球界にまで広がっていた。今日6日、アジアシリーズのため韓国に出発。高橋由らベテランは休養優先で同行しない。投手陣も内海、山口は同様に欠場するが「アジアシリーズに対して失礼。シリーズの価値を下げないためにも参加することを直訴させてもらった」と、自ら強く希望した。

 欠場する仲間を非難するわけではない。この時期の蓄積疲労は痛いほどよく理解している。だからこそ、主将の自分がという思いが強い。原監督が「彼を見てると本当に素晴らしいっていうか尊敬する。何とか賞を創設して、彼をたたえてほしいね。みんなで出し合ってね。額の問題じゃないよね」と、求めるほどの獅子奮迅ぶりだ。

 3連覇を目指すWBCで最大のライバルになり得るキューバとの前哨戦で、阿部が同行する意味合いは深い。グラウンドレベルで相手の特徴を肌で感じ、分析できる。同時に侍ジャパンでも精神的支柱の役割は変わらず、立ち上げから同行するメリットはチームにとって計り知れない。

 ただ一方で、体は確実に限界を超えていることも事実。右ふくらはぎには痛み止めの注射の痕が内出血し、痛々しく残る。CSファイナルステージで自打球を当てた左足親指の爪もはがれる寸前。この時期に無理をすることで本番にパンクする大きなリスクも伴うが、求められれば応えるのが阿部の真骨頂でもある。

 日本一からアジア一、さらには世界一へ-。日本シリーズ直後は「明日からはしばらく普通のパパに戻るよ」と、話していたが、その気持ちは、もうしばらく胸の奥にしまっておく。【為田聡史】