西武の「ポスト中島」の候補に挙がる永江恭平内野手(19)が、ヤクルトのベテラン宮本慎也内野手(42)の自主トレに参加することが11月30日、分かった。プロ入り前から宮本の守備を目標に掲げてきたが、オフの自主トレについて熟考する中、来年1月に愛媛・松山で行われる宮本の自主トレに参加を志願。今年は巨人坂本、寺内が入門し守備力を強化した「宮本塾」で鍛え上げ、「ポスト中島」に堂々と名乗りを上げる。

 単身での入門にも、永江に迷いはなかった。川端、山田らヤクルトの選手が多数を占める中、ヤクルト時代にチームメートだった石井を通じ、たった1人での参加を懇願した。「一緒にやらせていただけるなら、こんなに最高の機会はないですから。野球界の偉大な方ですし、同じ時間を過ごせるだけでも、僕にとっては財産になります」と目をギラギラ。気後れするどころか、ともに汗を流せる喜びにあふれた。

 今季は高卒1年目ながら、1軍に27試合出場。堅実な守備と小技でチームに貢献した。渡辺監督から「(松井)稼頭央とオーバーラップする」と評され、球団側も将来の正遊撃手として期待。同自主トレは、坂本が「かなりきつかった」と漏らすほど、球界屈指のハードトレーニングで有名だが、その成果は数字が証明した。坂本の失策数は昨季の18から15に減少。3年ぶりの打率3割超えも達成し、攻守で輝きを放った。

 チーム、永江にとって、ターニングポイントの年になる。中島がFA権を行使し、メジャー移籍を表明したが、球団はFA選手の補強を凍結。育成をチーム強化の軸に据えたが、根底には大物選手の流出を若手が補ってきた歴史がある。04年は松井稼頭央の後釜を中島が務め、08年は松坂大輔の穴を岸、涌井らがカバー。ともに日本一を勝ち取った。「ポスト中島」は高いハードルだが、若手にはチャンス。有力候補の1人に、永江が挙がる。

 この日は、埼玉県内で行われた野手会ゴルフに参加。チームの公式的なイベントはラストで、永江もチームメートとともに、中島との別れを惜しんだ。中島からはシーズン中に「周りは気にせず、思い切ってやればいいんだよ」と助言を送られ、胸に刻み込んだ。飛躍の2年目へ、職人の理論を体に染み込ませ、土台を作り上げる。【久保賢吾】

 ◆永江恭平(ながえ・きょうへい)1993年(平5)5月7日、佐賀県出身。海星から11年ドラフト4位で西武入団。高校時代は遊撃手兼投手で、3年夏の甲子園では149キロを計測。高校通算27本塁打。7月15日オリックス戦で1軍デビューし、27試合に出場。27打数1安打、打率3分7厘。174センチ、77キロ。右投げ左打ち。

 ◆宮本塾

 宮本塾長の指導の軸は、基本の確認と反復になる。昨季は巨人坂本、寺内が講座を受講。キャッチボール中から「球の回転とかをチェックしろ」と指摘した。約15メートルほど離れた距離から左側に転がしたゴロを捕球し、送球を繰り返す練習にも「もっと右から入れ。頭が下がってるぞ!」とゲキを飛ばした。200球弱のボールは次々と転がされ、坂本でさえ「足がピクピクです」と漏らす練習量を誇る。本来はヤクルトの若手に対するもので、毎年1月の自主トレは、例年10人前後が参加。愛媛・松山の権現温泉に泊まり込み、寝食を共にしながら、坊っちゃんスタジアムで厳しい練習を行う。来年1月も川端、松井淳、中村、山田、荒木らが参加する予定。