大物ルーキーは「ゆとり教育」で大成を目指す。日本ハムのドラフト1位、花巻東・大谷翔平投手(18)が5日、同校で自主トレを公開した。高い注目度から並の新人なら練習もオーバーペースに陥りがちだが、体作り第一を宣言した。栗山監督をはじめ球団首脳も2軍スタートの方針で一致。11日からは千葉・鎌ケ谷で新人合同自主トレが始まる。「エース兼4番」を目標とする希代の注目ルーキーは、ゆっくりとプロ元年をスタートさせた。

 真っ白なトレーニングウエアに身を包んだ大谷が、白銀の世界を駆けた。花巻東のグラウンドで、「エース兼4番」へのチャレンジは幕を開けた。「体ができていないので、まずは体作りをやっています。(11日からの新人合同)自主トレで動けるように、気合を入れてやりたいと思います」。技術よりも、まずはプロ仕様のボディーを作り上げること。焦ることなく、1歩1歩夢へと向かっている。

 新年2日からブルペンで投球練習を行っており、この日も雪上でのキャッチボールを公開したが、それは「いつも(例年)通りやっている」こと。例年と明らかに違うのが、ウエートトレの量だという。アマ時代、年末年始は「唯一休みの時期だった」が、今年は休みを作らずに体作りに励んでいる。スクワットやランジなど、「80~90%の力で」持ち上げられる130キロのバーベルを使い、下半身を鍛えているという。

 理想のボディーも描いている。現在87キロの体重を90キロまで増やす一方で、12%の体脂肪率を1ケタ台に持っていく。「しっかりと考えながらやりたいです」。技術向上に走るのではなく、ビジョンを持ちながら、まずは戦う肉体を作りあげる。

 球団も「ゆとり教育」を施す方針だ。年末に行われたメディカルチェックでは、仰天の新事実も明らかになった。エックス線写真に、はっきりとした骨端線が見つかった。骨端線とは「成長が止まると自然に消えてなくなるもの」(球団トレーナー)。つまり、18歳の肉体はいまだ成長途上であるということ。この日、都内で行われた日本ハム本社の年頭式典に出席した栗山監督も「膝がうまく使えないと肩、ひじに負担が出たりする。下手したら1年間は、無理させないという考えもある」と、ゆとりを持って成長を促す考え。大フィーバーが予想される2月の春季キャンプについても「それ(フィーバー)が強ければ、ファームからスタートという考えもある」と、2軍スタートを示唆した。

 新年早々、“神のお告げ”もあった。元日に母加代子さんの実家がある関東で過ごし、初詣のおみくじは「中吉」。「旅立ちっていう項目のところに『遠くへ行かずが利』って書いてあったんです。(メジャーではなく)日ハムで良かったのかなと思いました」と運命を感じたという。誰も届かないほど高く飛び立つため、まずはしっかりと足元を固める。【本間翼】