阪神桧山進次郎外野手(43)が14日、宜野座球場で今キャンプ初めてのランチ特打を行った。130スイングで11本のさく越えを放ち、安打性59本の打率4割5分4厘。左鎖骨骨折からのリハビリ中だった昨年とは雲泥の差で、若返ったような動きだった。新戦力に注目が集まるキャンプだが、代打の神様は健在だ。

 今年も虎には神様がついている。第3クールを迎えた宜野座球場の昼下がり、桧山のランチ特打がスタートした。グラウンドにただ1人立ち、スタンドの視線を独占した。テークバックからフォローまで、きれいなフルスイングではじかれた打球は極上のスピンがかかったままセンターへ、右中間へと伸びていった。

 「不安な気持ちでバッティングに入ったけど、打ち始めてみれば、体のキレもあったかなと思います。試合になれば、速い投手を打たないといけないのでミスショットのないように心がけました」

 約40分、130スイングで11本のさく越えを放った。安打性の当たりは59本、打率に換算すれば4割5分4厘となる。わずか1打席にすべてをかける代打の切り札。1球あるか、ないかの好球を仕留めなければならない。だからこそ、常にフルスイングで、なおかつ、一発必中を追求する。

 チーム最年長の仕上がり具合に、和田監督も絶賛の言葉しか出てこなかった。

 「去年と比べて雲泥の差だね。(1軍キャンプ地近隣の)金武(きん)を有効に使ってしっかり振り込んできたというのが見て取れる。芯の近くに当たる確率が高いよね。この時期にあれだけ振れて、今年にかける思いがあるだろうし、彼は毎年、覚悟を持っていると思う」

 昨年キャンプは左鎖骨骨折でリハビリから始まり、シーズンでは67試合で打率2割2分4厘、6打点だった。だが、今季はまったく不安なく、ここまできた。猛虎の切り札は確実に鋭さを増している。

 「こんなに元気な姿で野球をやれるのをうれしく思います。去年とまったく違うぐらい。新しい選手もチームに入って、なじんでいますし、いい雰囲気でやれている。個人というよりもやはり優勝したいです」

 代打であと1打点を記録すれば通算代打打点の球団単独トップとなるが、代打の神様には優勝しか見えない。いざとなれば、この人がいる-。チームにも、ファンにも、不思議な安心感を与える桧山の打撃だった。【鈴木忠平】

 ◆桧山の12年春

 前年11月に京都・宇治市でのイベント中に転倒し、左鎖骨を骨折。手術を受けた。2月1日の1軍宜野座キャンプ初日から完全別メニュー。慎重に調整を続け、同25日から鳴尾浜でのリハビリ組合同練習に参加。3月18日の教育リーグ、ソフトバンク戦(鳴尾浜)で同年初の実戦出場。その後オープン戦2試合に出場し、開幕1軍メンバーに名を連ねた。