<練習試合:阪神1-1オリックス>◇2日◇高知・安芸

 先輩の貫禄だ。阪神岩田稔投手(29)は大阪桐蔭の後輩藤浪が降りたマウンドに立った。3回1失点と、開幕へ向けて順調な調整ぶりを見せた。WBC日本代表の能見が開幕投手の最右翼だが、猛虎には岩田もいる。そう思わせるだけの頼もしい投球だった。

 藤浪から代わった3回。先頭深江をスライダーで空振り三振に仕留めると、テンポよく坂口、安達を打ち取って3者凡退だ。3イニング目となった5回に不運な形で内野安打の間に1点を失ったが、まったく危なげなし。怪物新人の実戦デビューはハラハラドキドキを伴ったが、岩田は終始、安心感に包まれていた。

 「四球なく、3人で終わることを目標にしていました。(5回は)ああいう状況であっても、ゼロを並べないといけない。シーズンでは負けに直結する」

 本人が求めるものはまだまだ上だ。それでも、右足を踏み出す位置をマイナーチェンジした今季はボールの進化を実感している。

 「ボールの強さが出てきたかなとは思っています。キャッチボールなんかでも突き抜ける感覚というか」

 これまで持ち味は動くボールだったが、今は強く、伸びていく球筋のイメージだという。29日の開幕投手は現在、WBCを戦っている能見が本命だが、仮に何かあったとしても岩田がいる。藤浪デビューに沸いた安芸で、淡々と開幕へのステップを上がった。【鈴木忠平】