<巨人4-2阪神>◇16日◇東京ドーム

 20歳最後の登板で、殻をぶち破った。巨人先発の宮国椋丞投手が、8回2失点で今季初勝利を挙げた。立ち上がり制球に苦しみ、3回までに2失点。ここで開き直った。捕手阿部に「真ん中にミットを構えて下さい」とお願いし、4回から8回まで無安打に封じた。たくましくもぎ取った1勝目で、今日17日に迎える21歳の誕生日を自ら祝った。

 宮国が腹をくくった。3回、2死無走者から四球を2個も出した。満塁となった。「コース、コースと遠慮していた」。阿部が間を取ってくれた。「調子が悪い日もあるんだ」と言われた。だが阪神新井貴に、置きにいった直球を適時打された。ベンチに戻ると、自ら「全部、真ん中に構えて下さい」と言った。

 阿部は理解してくれた。その上、逆転3ランまで打ってくれた。申し出た以上、やるしかなかった。「修正、というより、思い切り腕を振ることだけを考えました」と振り返った。右の軸足で、思いっきりプレート板を蹴って、体ごと阪神に立ち向かった。球威はもちろん、コントロールも一気に改善した。4回から8回まで無走者。能見との投げ合いを制した。

 ただの開き直りじゃなかった。宮国は、したたかに能見を洞察していた。降板するまで、1度も足元の土をならさず、そのままにしておいた。真っさらなマウンドに立つ先発投手は、一般的に、踏み荒らされたマウンドを嫌う。だが宮国は「逆です」と断言する。

 宮国

 相手の方が、どうやって軸足を蹴っているか。踏み出す足の幅や、爪先の角度もですが、マウンドにヒントが残っている。勉強させてもらっています。

 開幕投手を務めた。エース格の投手と投げ合うケースが多い。能見とは、2週連続の顔合わせになった。「もちろん、チームが勝つことが第一で」と前置きした上で「楽しみなんです」と不敵に笑っていた。

 宮国

 能見さんが左投げでも関係ない。一体、どうやって投げているのか。この間の甲子園も、ずっと見てました。許されるのなら、携帯のカメラで撮影したいくらいです。

 能見が降板した6回、2人が軸足でプレート板を強く蹴った跡が、きれいに左右対称で出来上がっていた。原監督は「躍動感があった。相手のエースと、堂々とね」と評した。今日17日に誕生日を迎える。伸び盛りの21歳は、試合の中でも劇的に成長する。【宮下敬至】