<日本ハム3-11DeNA>◇2日◇旭川

 トンビになれなかった。歴史ある旭川スタルヒンで、初のナイター開催。日本ハム栗山英樹監督(52)の夢は、はかなく散った。試合前だった。一塁側ベンチに腰を下ろし、報道陣への取材対応している時だった。左翼の上空に、強風と戯れるながら舞う1羽のトンビが目に入ってきた。野球で直面している現実から一瞬リセットし、自分の姿を重ねた。「あれは、トンビだよね?」と目を見開き、細めた。続けて、言った。「あれぐらい優雅に飛びたいね。たくさん勝って…」。

 難題山積の中で、この日も船出した。武田久が右肘の強い張りを訴えて出場選手登録を抹消。守護神が消えた。プロ初勝利の先発登板から一夜明けた大谷は負担を考慮し、野手としての右翼起用を控えた。稲葉も左ふくらはぎの張りで、出場を見合わせざるを得ない状況だった。暗中模索の用兵で、エースの武田勝が3回までに7失点。4回7失点の前回5月26日阪神戦と同様に持ち味を出せずKOされた。「チームの足を引っ張ってしまった。2試合、続けて情けない」。一番のキーマンが崩れては、投打はかみ合わなかった。

 旭川のナイター照明設備はDeNA本拠地の横浜スタジアムと同じ業者。参考にしてこの日、明るさを調整した。皮肉にもルーキー三嶋と宮崎が奮闘するなど、相手がこうこうと輝いた。熱い指揮官は「本当に申し訳ありません」と何度も口にして陳謝した。ダメージ十分の黒星に、開幕からの低迷する苦悩を打ち明けた。「深い闇の中にいる感じが消えない」。反攻の灯が見えないままなら、パ連覇の野望も風前のともしびになる。【高山通史】