<ロッテ4-0ヤクルト>◇3日◇QVCマリン

 「投手、江村-」。8回裏、ヤクルト選手交代のアナウンスを聞いたロッテ江村直也捕手(21)は、体に力が入るのを感じた。1死走者なしで巡ってきた、5歳上の兄将也との初対決。3ボール1ストライクからはじき返した内角高めの140キロは、遊撃手の正面をついた。「打ってやろうと思ったんですけどね。想像以上に球が来てて、ビックリしました」。全球直球の真っ向勝負は、兄に軍配が上がった。

 プロ入り前からの念願だった。高卒3年目の江村は、社会人を経て入団した兄よりプロ歴で2年上回る。「僕は兄がいたから野球を続けられたし、兄も僕がいたからプロをあきらめなかった」。尊敬し合い、前日2日も2人で食事に出かけた仲良し兄弟。オフに打撃投手を頼んだことはあるが、真剣勝負は生まれて初めてだった。伊東監督も「プロ野球選手冥利(みょうり)に尽きるな」と笑った。

 兄に負けても、試合には勝った。西野ら3投手を好リード。ヤクルト打線を5安打無失点に抑えた。首位躍進のきっかけとなった5月頭の8連勝も、江村と西野が1-0に抑えたオリックス戦が始まりだった。西武時代、高卒ルーキーの炭谷を抜てきした伊東監督は「あいつが雰囲気をつくってくれてる」と評価し、開幕から使い続けている。息子と同い年の江村を、指揮官は時にマンツーマン指導しながら、大事に育成している。

 1軍メンバー最年少の21歳は、高校球児さながらの丸刈り頭でみんなからいじられる愛されキャラ。今日4日からは広島戦で故郷に戻る。「(6日の試合会場の)しまなみ球場は、中学の時よく試合をやってた球場。大事に戦いたい。今日の対決も、親が一番喜んでるんじゃないですかね」。ビジターなど関係なく、江村が故郷に錦を飾る。【鎌田良美】

 ▼ヤクルト江村将也投手と弟のロッテ江村直也捕手が対戦。兄弟が投手と打者で対戦は昨年の陽耀勲(ソフトバンク)と陽岱鋼(日本ハム)以来で、陽兄弟は昨年8月8日に初対戦し通算5打数2安打、1四球(今年は対戦なし)。日本人兄弟では98年7月16日に山田勉(広島)と弟の洋(中日)が対戦(結果は三振)して以来、15年ぶり。山田兄弟はともに投手で、日本人投手と野手の兄弟対決は定岡正二(巨人)と弟の徹久(広島)が83年4月21日(結果は三振、遊飛)と84年9月17日(結果は二ゴ)に対戦して以来のこと。