<中日4-3オリックス>◇5日◇ナゴヤドーム
やりましたー、サヨナラでーす。途中出場の中日ベテラン小田幸平捕手(36)が同点の9回2死から、投ゴロ失策で決勝点をもぎ取った。打った瞬間は延長かと思われたが、執念が通じて白球がグラブをはじいた。一塁も際どかったが間一髪のヘッドスライディング。先発カブレラが5回に負傷降板するなど重い展開を制し、守道監督も大喜びだ。
打球が投前に転がった瞬間、延長突入かと思われた。同点の9回2死一、三塁。だが小田の執念が乗り移った白球が平野佳のグラブを弾いた。一塁へ迷わずヘッドスライディング。ガッツポーズの背番号52がもみくちゃになった。
「エラーやぞ。投手返しのサヨナラでエラーなんて見たことないぞ」。記録は内野安打ではなく相手失策。ナインから散々ちゃかされても、これぞ小田らしい泥だらけのヒーローだ。
「アイムハッピー!
トウデー・ハッピー!」。クラークと並んだお立ち台は劇場全開だ。「打率がないんで記録員の方、ヒットにしてほしかったんですが」、「当たったら何かが起こる。遅い足を必死に回しました。でもたどりつかないんで頭からいきました」、「毎日どろどろになろうと思ってやってるんでどろどろになってよかったです」。そして締めは「3、2、1、やりましたー!」。スタンドの竜党は総立ちだ。
苦い思いを力に変えた。3日仙台での楽天戦。この日と同じく途中出場した試合の延長11回、自身の二塁悪送球がサヨナラ負けにつながった。さすがの陽気な男も「しゃべれる状態じゃなかった…」ほど落ち込んだ。眠れない夜…。だが「僕が期待されてるのは9割5分が守り」と見つめ直した。部屋中に炊いたのは、心を静めてくれるラベンダーのアロマ。オフは愛知・知多のお寺で座禅も組む男は、精神統一してリベンジの瞬間を待っていた。
7回からマスクをかぶらせた高木監督も大喜びだ。「意外性に期待したけどまさに意外やった。でもあれはヘッドせんでもセーフにならんと。この勝ちは大きいわ」。先発カブレラが負傷降板した重苦しい展開で、文字通りの救世主。3連敗を阻止したが借金はまだ10ある。小田が最後に、ナインの思いを代弁した。「弱いチームでも強いチームでもない。今は歯車が合わずに負けているけど、みんなが自分の仕事をしていけば勝てる。みんなの力が束になっていけば絶対勝てます」。6月反攻へ勢いのつく勝利。小田の泥まみれヘッドが、流れを変える。【松井清員】



