<阪神4-3ロッテ>◇9日◇甲子園

 サヨナラの虎だ!

 阪神がマット・マートン外野手(31)のサヨナラ2ランで再奪首に成功した。6日西武戦でサヨナラ弾を放った助っ人が、1点を追う9回、今季被本塁打ゼロだったロッテの守護神・益田から左翼席に運んだ。今季6度目で、この4連勝中3度目のサヨナラ勝ち。6回途中で降板したルーキー藤浪の黒星も消し、虎の進撃が力強くなってきた。

 真っ青だった空はもう、薄暗くなっていた。マートンはお立ち台で巨人-楽天戦での宿敵敗戦を伝えられると、白い歯をこぼした。「イイデス!

 イエーイ!」。頼れる4番が中2日で再びサヨナラ弾を決め、猛虎が首位の座を奪い返した。

 まるで再現VTRだ。1点を追う9回裏無死一塁。ロッテ守護神益田の初球、外角スライダーをファウル。2球目、真ん中スライダーを強振した。打球は左中間席中段に着弾。逆転サヨナラ2ランで4時間21分の熱戦にピリオドを打った。

 「そう、あの時と同じバットだよ。どんな状況でもサヨナラ打は特別。慣れるなんてことはないね」。3日前の6日西武戦で人生初のサヨナラ弾を放ったばかり。前回も初球から2球連続続いたスライダーを左翼席に運んだ。初球空振りの後、割れていたバットを交換した直後に劇的弾。「ラッキーバット」とたたえた相棒が、今季3度目のサヨナラ打を呼んだ。

 「冷静と情熱」の使い分けがうまい。高級ホテルの喫茶店でも、打撃論を語り出すと止まらない。「どう説明したらいい?」。コーヒー用の角砂糖をつかむトングをバットに見立て、身ぶり手ぶりで確認。それでも納得いかない時、突然立ち上がって「エアスイング」する時もある。ただ、周囲を驚かせないよう、周囲に人が少ないことを確認してから。常に冷静さを失わないから、極限の状況で力を発揮できる。

 12試合ぶり今季12度目の猛打賞でルーキー藤浪の甲子園初黒星を消し去った。「彼は甲子園で2回優勝して、プロ入り後も甲子園で負けていない。素晴らしい」と認めている。昨夏の甲子園を映像でチェックしていた時、「背は小さくないけど、若いから」という理由で「ミニ・ダルビッシュ」と命名。愛する後輩となった今は、バットで援護を続けている。

 ここ4試合で3度目のサヨナラ勝利。4連勝で今季最多の貯金12。1日天下となった2日以来7日ぶりに首位に立ったが、「巨人は素晴らしいチームで去年のチャンピオン。でも、他のチームも上がってくるチャンスがある。10月が終わった時に1位でいることが大事」と落ち着いている。本気だからこそ冷静に、猛虎が巨人を仕留めにかかっている。【佐井陽介】