日本一連覇を目指す巨人に吉兆だ。巨人は19日、ジャイアンツ球場で全体練習を行ったが、そこに現れたのは体長20センチ、太さ3センチはゆうにある大ムカデ。毘沙門天の使いともいわれ、戦いにおいては縁起のいい珍客の来訪で、巨人に勝ち運がもたらされた。

 ユニホームに着替え、グラウンドに向かおうとしていた選手たちをじっと見守る存在があった。ジャイアンツ球場クラブハウスの壁に、巨大ムカデが張りついていた。川口投手コーチが「触らない方がいい。危ない。でも久しぶりに見たな」と見上げる。原辰徳監督(54)も「靴履くのが大変だろうな」と冗談交じりに、グラウンドへ下りていった。

 ムカデは後ろに下がれないことから、決して退却しない縁起のいい存在とされてきた。武田信玄が周囲の優れた武者にムカデの旗印を与えムカデ衆と呼んだことや、かぶとの意匠にも使ったことでも知られる。毎年1月、武田神社に必勝祈願に行く原監督にとっては、この上ない吉兆。そんなムカデの来訪の持つ意味を知ると「なるほどね。そうなんだ」と頬を緩めた。

 原監督にとって、忘れられない吉兆が、昨年もあった。1年前、整備用新幹線のドクターイエローを目撃した。めったに見ることのできない黄色い新幹線。その御利益もあってか、昨年は5冠を達成できた。「あれはずっと入ってるよ」と、今でも携帯電話に写真を保存している。「かなりの縁起ものだったな。ムカデに匹敵するぐらいなんじゃないかな」。今年、力を借りることになるムカデの御利益にも期待している。

 明日21日から再開するペナントレースの初戦となる中日戦は、群馬・前橋で開かれる。敷島球場バックネット裏方面に見上げる赤城山のご神体が大ムカデ。このタイミングでのムカデ出現は、何かのお告げとしか考えられない。開幕から、順調に戦ってきた巨人。日本一連覇に向けて、ムカデ競争のような結束を武器に、リーグ戦を再開させる。【竹内智信】