<日本ハム7-2ロッテ>◇14日◇札幌ドーム

 涙の復活劇だった。日本ハムのボビー・ケッペル投手(31)が、右肩手術を乗り越えて639日ぶりの白星を手に入れた。復帰登板は5回2死までパーフェクトに抑える好投。最後はロッテ鈴木に2ランを浴びたが、5回2安打2失点で2年ぶりの勝利を挙げた。お立ち台では、長かったリハビリ生活を振り返って声が詰まる場面も。後半戦へ向けて、待望の優良助っ人がチームに帰ってきた。

 「オヒサシブリデス!」。ケッペルが、笑顔で声を張り上げた。本拠地・札幌ドームの大歓声が心地よい。自然と脳裏に苦しかったリハビリ生活がよぎる。昨年4月に右肩を故障してから約1年3カ月。支えてくれた全ての人への感謝がこみ上げた。「セッ…センキュー」。思わず、声が詰まるほど感慨深かった。

 本人もびっくりの復活劇だった。5回2死まで完全投球。3回には鈴木の打球を抜群の反応で“背面キャッチ”に成功した。中前へ抜けそうなライナーが、反射的に背中に伸ばしたグラブにすっぽり収まった。降板直前に失点したものの、復帰登板としては上々の内容。ベンチへ戻ると黒木投手コーチに言った。「日本の野球の神様が、ご褒美をくれた」。

 心はずっと揺れていた。2月の春季キャンプ以降、患部の状態は一進一退を繰り返した。不安といら立ちを隠せない日もあった。それでも中垣トレーニングコーチを始め、首脳陣や球団はケッペルを見放さなかった。復活を信じて、この日を待ってくれていた。「いつ解雇になってもおかしくなかったのに、またチャンスをもらえた。残りのシーズンで期待に応えていきたい」。迷いは消え、恩返しを強く誓った。

 栗山監督も感無量だった。1軍に合流した12日に「エンジョイ」と、結果を問わず楽しめと伝えていた。目の前で力強い投球を見て確信した。「2人(ケッペルと新外国人のトーマス)ともいけるのであれば、一気に勝負にいける可能性がある」。今後は後半戦のローテ入りを見据え、1度出場選手登録を抹消されるが、大逆転でのV2へ頼もしい助っ人右腕が帰ってきた。【木下大輔】