<広島1-6巨人>◇11日◇マツダスタジアム

 区切りの10勝目だ。巨人先発の菅野智之投手(23)が、7回を投げ1失点で2けた勝利をクリアした。直球で押してから変化球で仕留める、教科書通りの投球。広島打線に的を絞らせなかった。新人右腕の好投で、チームは今週負けなしの5連勝。優勝へのマジックナンバーを37に減らした。

 派手にグラブをたたいた。4回。菅野が、この日唯一の四球と安打で1死一、三塁のピンチを迎えた。打者は1打席目に安打を許している広島岩本。2球で追い込んでから簡単にはいかない。際どいコースを攻め続けるもフルカウントまで持ち込まれた。9球目。外角球を泳がせた。「最後はワンシームでゲッツー。そのつもりでいた」と、狙い通りの遊ゴロ併殺に仕留めた。

 ヤマ場を乗り越え、優勢を保った。序盤から直球を走らせ、強気の投球で押した。味方打線から3回までに2点の援護を受け「守るのではなく攻める気持ちを持って粘り強く投げた」。6回に本塁打で1失点したが、再びエンジンの出力を上げて、最後の7回は3者凡退で締めた。試合の流れを引き戻してからマウンドを降りたことで、打線も終盤に4得点で畳み掛けた。

 開幕から、ここまでの道のりでも正念場を越えてきた。7月初旬だった。当時もチーム最多の8勝をマークしていたが、初めての阪神戦で5回2/3を2失点でKOされた。十分な数字を残しているにもかかわらず、少しだけ不安そうな顔をしていた。「このまま8勝でシーズンが終わってしまったら…と、よぎることもある。そういった意味では2ケタの10勝は1つの節目になる」。ルーキーであっても、巨人のローテーション投手が背負うべき責任感を理解していた。

 今季100試合目の節目の試合。自身の背番号と同じ19試合目の登板で、チーム一番乗りの10勝目を勝ち取った。第一声の「ここまで勝てるとは思いませんでした」は、きっと本心ではない。「まだ通過点だと思っている。これから、後半戦、クライマックス、日本シリーズでいい投球をしないといけない。そういう意味では次につながる」と、目指すところは、もっと先にある。

 頼もしいルーキーの好投でマジックも着実に減らした。原監督も菅野の二枚腰を評価した。「久しぶりに先発が7回をね。7回1失点で投げきった。良かったと思います」とねぎらい、「全てのことが初めての中で10勝。これをエネルギーに変えてほしい」と、さらなる期待を込めた。マジック同様に1つ1つの積み重ねが「収穫の秋」につながっていく。【為田聡史】