<日本ハム4-2オリックス>◇13日◇旭川

 日本ハム木佐貫洋投手(33)が、移籍後の対オリックス初勝利を挙げた。今季2度目の古巣相手に7回6安打2失点。1回に糸井に先制2ランを浴びたが、2回以降は要所を締め、逆転を呼び込んだ。オリックス時代の昨季、日本ハム戦で5回途中8失点KO降板した悪夢の地で、ユニホームが替わった今季は白星をつかんだ。

 つつましく、謙虚にトラウマだった苦い思い出を溶かしていった。日本ハム木佐貫が丹念にマウンドを守り、過去2戦2敗の旭川スタルヒンで3度の挑戦で初白星を手にした。丁寧に低めに集め続けた、ちょうど100球。7回2失点の粘投。お立ち台では背中を少し丸めながら、2万の観衆からの優しい祝福のシャワーに身をゆだねた。チームトップ8勝目。「スタルヒン球場でさんたんたる成績だったので、何とかしないといけないと思っていました」と、しんみりとした。

 くじけず、折れない強さが生命線だった。1回。いきなり糸井に中堅右へ運ばれる先制2ランを献上した。4回に逆転してもらうと粘り強さに、さらにスイッチが入る。5回終了後、6回の投球へ向かう直前。中堅後方で上がる花火に誘惑されたが、断ち切った。「花火をずっと見ていたかったけれど、ずっと見ていると『だから打たれるんだ』って思われるのが嫌で」と視線を切った。日本ハムファンが見たくない“花火”は、糸井に献上したのみ。許した残り5安打はすべて単打で、しのいだ。

 感慨深い白星を、また1つ積み重ねた。6月の阪神との札幌ドームでの交流戦。今季、唯一の完封勝利を挙げた6月13日の夜だった。同じく今季移籍した日高、大引と旧交を温める「オリックス同窓会」を開いたほど愛着があった。3年間在籍した古巣から、今季2度目で移籍後初勝利、巨人時代以来6年ぶりの同戦白星でケジメをつけた。大の鉄道好きで乗車を好む「乗り鉄」。前日12日には札幌から単独で旭川入りし、念願だった「富良野・美瑛ノロッコ号」にゴトゴト揺られた。テンション十分で臨んだ一戦でみんなが幸せな終点へ、導いた。【高山通史】