<日本ハム2-1オリックス>◇14日◇旭川

 伏兵のV打で最下位脱出だ!

 日本ハムが1-1で迎えた7回、佐藤賢治外野手(24)の左越え適時二塁打で勝ち越し、オリックスに競り勝った。推定年俸630万円の旭川大好き男が、同1億2000万円の相手エース金子から決勝打を放ち、球宴後初の連勝をマーク。7月25日から続いた最下位から抜けだし、5位に浮上した。

 旭川スタルヒンのカクテル光線を、独り占めした。連夜の会心の接戦勝利。この日も伏兵・佐藤がヒーローになった。勝てば最下位脱出の分岐点で決勝打。7年目で脚光を浴びた立役者をお膳立てした、栗山監督は足を組み、身を乗り出して見つめた。前夜は中島で涙した瞳は、この夜も潤んでいた。佐藤は、しんみりと言った。「監督さんの何か思いみたいなモノを感じていた。感謝しています」。心の底からの深いメッセージを送った。

 大仕事だった。難攻不落のオリックス金子を仕留めた。同点の7回2死二塁。スライダーを逆方向へさばいた。フェンス直撃の勝ち越し二塁打。相手11安打、日本ハム4安打。完璧な劣勢でのしのぎ合いを制す一振りだった。ベンチでは慕ってくれ、苦悩をともにしてきた中田ら後輩、先輩が手荒く出迎えた。地道に継続した下積みを知るから-。「頭、どつかれました」と心地よい痛みで、存在価値を実感できた。

 輝かしい世代の日陰で生きてきた苦労人だ。日本ハムでは斎藤と吉川、楽天田中らと同い年。名門横浜出身ながら06年高校生ドラフトでは、知る人ぞ知る逸材。ロッテから2位の上位指名でプロの門をたたいた。そのドラフト前日。山田GMがお忍びで、同校を訪問していた。隠し玉で上位指名をもくろんでいたのが、佐藤だった。パのライバル球団にさらわれ、同GMらは誤算と嘆いていたほど熱愛だった。

 佐藤の記憶にも、今も鮮明に残る。「わざわざ前日に僕を見に来てくれたんですよね」。ロッテで才能が埋もれかけていた10年5月。無償トレードで日本ハム入り。ようやく結ばれた縁を生かし、天性の才能を花開かそうとしている。6月2日のDeNA戦でプロ初本塁打を放ったゲンのいい球場で、またも野球人生を切り開いた。相性について「不思議なくらい。2軍の球場と少し似ているからかもしれない」と分析。苦難のバックボーンをジョークにできた。佐藤が、シンデレラボーイ候補に名乗りを上げた。【高山通史】

 ▼日本ハム佐藤が貴重な決勝打を放ち、旭川では通算14打数5安打5打点となった。旭川では、今年6月2日DeNA戦でプロ初本塁打を放ち、前日13日にはプロ初のマルチ安打をマークするなどプロ通算9安打のうち5本をマーク。通算打率1割台だが、旭川では3割5分7厘と相性抜群だ。