<楽天1-2西武>◇5日◇Kスタ宮城

 主砲の1発で4年連続のCS進出が決まった。西武中村剛也内野手(30)が決勝の4号ソロを放った。1-1の9回無死、楽天則本の148キロ直球を左中間席に豪快に運んだ。3日のソフトバンク戦に続く勝ち越しのソロで、チームの3位以上が確定した。9月16日に5ゲーム差と開いた3位との差を14試合で逆転。渡辺監督が「奇跡を起こすというか、起きた」と驚く猛烈なラストスパートでCS出場権をもぎ取った。

 一塁へ走りだす必要もなかった。CS進出を決める放物線を目で追いかけ、中村はゆっくりダイヤモンドを回った。ベンチに戻って、片岡に頭突きを浴びせ、喜びを表現。節目の1勝を“花火”で彩った。「あんまり打ってないですけど、いいところで打てたんじゃないかと」。試合後に淡々と語る姿はいつも通りだったが、自慢の1発で決めた快感は格別だった。

 同点の9回無死。ベンチ裏で「決めてくれ」と声を掛けた渡辺直に、中村は「決めてきます」と予告し、打席に立った。1ボール1ストライクからの3球目、フルスイングで148キロの直球をバットに乗せた。「ヒット狙いで、あのスイングはないでしょ。何とか長打を打とうと」。本塁打を打つために試行錯誤を積み重ねたスイングで、鮮やかに左中間席の柵を悠々と越えた。

 手術を受けた左膝のリハビリ中の7月中旬、左肩に衝撃が走った。試合前、いまやルーティンとなったのは痛み止めの薬を飲むこと。「オレの体はそんなやわな体ちゃうから」と笑顔を作るが、打撃練習の序盤は力を入れずに振り始め、体を慣らす姿を見れば痛みがあるのは明らかだ。だから、「1発で仕留める」。左膝や左肩が100%でない中、苦闘が続くチームのために復帰。一撃必殺の13年版打法で試合を決めた。

 9月16日、3位ソフトバンクとの差は5ゲームあったが、猛烈なラストスパートで進出を決めた。就任6年目を迎えた渡辺監督も、選手の戦いざまにうなるしかなかった。「僕の経験の中ではありえないこと。奇跡を起こすというか、起きた」と目を丸め、「選手たちを誇りに思う。逆境の中からよく勝ち取った」と称賛した。今季掲げたスローガンは「骨太」だった。「ぶっといと思います」と初めて認めた。

 今季初の6連勝で2位ロッテとの差は1・5ゲーム。残り2試合のターゲットは、本拠地西武ドームでのCS開催権を得られる2位に絞った。渡辺監督は「何とか地元で、と思っている。気を抜かずに、あと2試合取りにいく」と力を込めた。昨季、終盤の勝負どころで屈した姿は過去のこと。骨太に、一気に加速した獅子が、下克上の権利を勝ち取った。【久保賢吾】

 ◆中村の苦闘

 昨年10月25日、左膝前十字靱帯(じんたい)の再建および左膝外側半月板損傷の修復手術を受けた。約1カ月の入院後、12月4日から膝の可動域を広げるリハビリを開始。今年1月10日に歩行訓練を6分から10分に延ばした。8月16日にイースタン・リーグのDeNA戦で実戦復帰し、いきなり代打本塁打。9月6日に1軍復帰、10日ソフトバンク戦で今季初本塁打を放った。