<コナミ日本シリーズ2013:巨人2-4楽天>◇第5戦◇10月31日◇東京ドーム

 楽天藤田一也内野手(31)は泣いていた。延長10回、1死二塁。巨人西村の直球が左ふくらはぎに当たり、もん絶した。ベンチへ1度引き揚げ応急処置。痛みに耐えて一塁走者として戻った。

 銀次の中前打で必死に足を進め、三塁へ進む。左足は限界だった。星野監督からストップがかかった。「悔しかった」。目をはらし、ベンチ裏へ下がった。治療用のベッドにうつぶせになると、涙が止まらなかった。

 今季は1度も2軍に落ちなかった。体質的に体が硬く、ふくらはぎや太ももを痛めることが多い。だから、普段から「危ないと思ったら、プレーをやめる。長期離脱を避けるため」と心掛けている。そんな藤田が、この日は負傷交代を渋った。それだけ、日本シリーズに懸ける思いの表れだった。

 シリーズは、まだ試合が残されている。今後を考えれば、死球を受けた時点で、すぐに交代を申し出た方が良かったかもしれない。それでも「出たいと思っていた」。試合後は、自力で歩行できず、車いすだった。倒れてもいいという覚悟で、一塁ベースに戻った姿に仲間が奮起した。交代後にジョーンズの適時打で4点目が入ると、ベンチにも聞こえるくらいの大声で喜んだ。球場の去り際、「大丈夫です。(第6戦は)行けます」と気丈に笑った。【斎藤庸裕】