<コナミ日本シリーズ2013:楽天3-0巨人>◇第7戦◇3日◇Kスタ宮城

 マー君が、日本一の胴上げ投手になった。楽天田中将大投手(25)が3-0の9回に登板。前日に160球を投げ完投負けしたが、志願のリリーフ登板だった。2死一、三塁と1発同点を招いたが、最後は代打矢野を空振り三振に仕留め、リーグ優勝、CSファイナルステージ最終戦に続く3度目の胴上げ投手になった。楽天は巨人を下し、対戦成績4勝3敗として、球団創設9年目で初の日本一に輝いた。

 これまでで一番力強いガッツポーズだった。9回2死一、三塁。1発同点のピンチで、田中は信じた1球を投じた。巨人の代打矢野をスプリットで空振り三振。両手を天に突き上げ、ありったけの声でほえた。あっという間にできた輪の真ん中で「1番」の決めポーズ。日本プロ野球の頂点に立った。

 田中

 Kスタで、東北の皆さんの前で、胴上げすることができて本当にうれしかったです。

 お立ち台に立つと、拍手が鳴りやまなかった。リーグ優勝を決めた9月26日西武戦、CS突破を決めた10月21日ロッテ戦でも9回を締めくくった。

 雪辱を期した連投だった。王手をかけて、第6戦の先発を託された。だが、160球の力投届かず完投負け。通常なら、連投は考えられない球数。それでも、星野監督に「行きます」と強く訴えた。投手に無理だけはさせない同監督を「じゃあ、行け」と折れさせた。「昨日は情けない投球だったので、今日出番がもらえるならいつでも行くぞと。意気に感じて、この舞台を用意してくださったチームのみんな、ファンの方々に感謝しながらマウンドに上がりました」と、疲れを忘れた15球で締めくくった。

 プロに入ってから「1年、1年、優勝を目指してやってきた」。7年目。ついに目標を果たした。ただ、最高の結果を手に入れても冷静な自分がいる。リーグ優勝した後、「優勝」の持つ意味を問われ答えた。

 「分からないままかもしれない。優勝は、チームとしての1つの結果です。僕自身は、緊張感の中で試合をできた、ということぐらいしかない。優勝したからといって、プレーで変わることはないです」

 たびたび「自分でコントロールできること」、「できないこと」の区別を口にしてきた。チームが優勝しても、しなくても、投手としてのベストを目指すだけ。与えられた役割を全うしたから、「日本一」という称号を手にできた。

 今オフにポスティングシステム(入札制度)によるメジャー挑戦が濃厚とみられ、この日が日本でのラスト登板の可能性が高かった。ファンも、そのことを分かっているから、拍手がやまなかったのか。お立ち台の最後、ファンへのメッセージを叫んだ。

 田中

 最高のシーズンでした!

 日本一になったぞー!!

 全ての野球好きの記憶に「田中将大」の名前を刻んだ。【古川真弥】

 ◆田中将大(たなか・まさひろ)1988年(昭63)11月1日、兵庫県生まれ。駒大苫小牧2年夏に甲子園優勝。3年夏は斎藤(早実。現日本ハム)と投げ合い決勝再試合の末、準優勝。06年高校生ドラフト1巡目で楽天入団。1年目の07年に11勝で新人王。11年は19勝で最多勝利、最優秀防御率、最高勝率で沢村賞。12年最多奪三振。今季はプロ野球新記録の開幕24連勝をマークし、無敗で最多勝利、最優秀防御率、最高勝率。通算175試合、99勝35敗3セーブ、防御率2・30。188センチ、93キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸4億円。夫人はタレントの里田まい(29)。