西武が主砲の中村剛也内野手(30)に、新たに4年契約を提示することを検討していることが8日、分かった。通常なら、来季は11年オフに結んだ3年契約の最終年だが、球団側は海外移籍可能なフリーエージェント(FA)権を持つ大砲の慰留に全力投球。主力組のFA流出を食い止めるため、日本人選手では球団史上最長となる4年の長期契約をあらためて結び直し、最大限の誠意を示すものとみられる。

 球界屈指の大砲に用意されたのは、最大級の評価だった。11年オフに3年総額10億円の条件で契約を結んだが、それをも上回る4年の大型契約。今オフ、FA権を取得した片岡、涌井が単年の提示だったように、球団の方針では複数年契約に慎重な姿勢だが、08年から5年間で4度の本塁打王を獲得したアーチストは別格と判断。日本人選手では球団史上最長となる、4年契約のオファーを検討したとみられる。

 本塁打の“おかわり”を続けた男に、契約の“おかわり”が用意される。今季、海外移籍が可能なFA権を取得。今オフは3年契約中で権利行使の可能性はゼロだったが、来オフは解禁される。かつて、FA権について、中村は「複数年契約中ですし、考えたことはないです」と話したが、仮にFA宣言すれば、日米複数球団の争奪戦は必至。大砲引き留めに向け、前倒しでの提示は必然だった。

 破格の提示は、オンリーワンの評価の表れだった。中村と言えば、「豪快な1発」が代名詞だが、12球団の長距離砲の中でも、そのパワーは群を抜く。10年オフの細川から4年連続で主力選手がFA流出した。若手の育成やチームバランスを考え、マネーゲームは避けたが、球団幹部が「彼のパワーは大物助っ人レベル。その評価はしないと」と話したように、「球界の宝」の待遇は特別だった。

 11年オフに結んだ契約では3年総額10億円。チームへの貢献度、FAでの市場価値を考えれば、それ以上の提示が相場とみられ、4年14億~16億円を超える条件が用意されそうだ。関係者によれば、中村は西武への愛着が強いとみられるが、伊原監督も「西武は常に強くなくてはいけないんです」と訴えており、超強力なピース引き留めへ、フロントも動いている。

 ◆西武の長期契約

 99年11月、台湾球界のエース許銘傑(シュウ・ミンチェ=台中金剛)に対し「ドラフト1位級の評価」(当時の楠城スカウト部長)で契約金1億円、年俸2000万円、契約期間5年を保証。外国人選手を除き、球団初の複数年契約は97年オフの伊東勤捕手。FA資格を再取得した伊東はFA宣言しての残留で合意、推定年俸2億円の3年契約で、再契約金1億円を含む総額7億で円満残留が決まった。

 ◆主な長期契約

 巨人が95年10月、高麗大の趙成珉投手と8年契約を結んだ(7年で退団)。松中(ソフトバンク)は06~12年に7年契約。中日では井端、荒木、森野が09年から今季まで5年契約。調子の波があるなどリスクの大きい外国人選手と4年以上の契約は異例だが、ヤクルトはバレンティンと13~16年の4年契約を結んでいる。(金額はいずれも推定)