<巨人6-4中日>◇20日◇東京ドーム

 巨人には、恐るべき8番打者がいる。身長172センチの小兵、橋本到外野手(23)が、1回に左翼フェンス直撃の適時二塁打、3回にはバックスクリーン右への2号2ランなど3安打3打点。下位打線ながら秘めたパワーを存分に発揮し、貴重な得点源をアピールした。

 小さな体から、大きなスイングを解き放った。3回1死一塁。橋本は140キロ直球を、バットの芯で捉え、バックスクリーン右へぶち込んだ。試合後のお立ち台では「一塁にランナーがいる状況でフライを上げてしまったことは反省です」と控えめだった。

 小兵のパワーは1回からさく裂した。左翼フェンス直撃の適時二塁打。4試合16打席ぶりの安打で打点は10試合ぶりだ。「逆方向は原点。バロメーターみたいなもの」と調子を取り戻した。8番ながら3打点で今季12打点。中日和田に次ぎ、日本人2位タイに付けた。原監督は「8番という打順の中で、ああいう打撃は大きい」と勝負強さを認めた。

 危機感は大きい。3戦連続無安打に終わり、前日の試合後は居残りで練習。この日の球場を離れる際には人気野球ゲーム「パワフルプロ野球」を手にし、ちゃめっ気たっぷりに「これから、また練習です」。頭は野球漬けだった。サイクル安打を狙えた8回の第4打席。チーム内からは「狙っていけ」と声が上がっていた。だが2点差に追い上げられた状況で、まずは出塁を最優先。セーフティーバントを試みた。アウトになったが、高い意識を示した。

 全試合に先発出場し、「スモール・ソルジャー」は、堂々と中堅のポジションを守り続けている。08年のドラフト会議前、球団内では低い身長に難色を示す意見もあった。だが打力と強肩を評価され指名された。原監督が「イチローのように長打が打てる」と評する打力を生かすことが、生きる道だ。オープン戦終盤の3月中旬。「スイングが小さくなっている。あの体でも長打力が持ち味だから、捨てては駄目だ」という指揮官のアドバイスで、再びスタイルを見つめ直した。

 巨人のスターになるため、肉体のパワーアップを追求する。体重は昨季から8キロ増の75キロ。知人からもらった約1キロの松阪牛を「焼いて食べました」とペロリ。5月中旬にはキューバからフレデリク・セペダ外野手(34)が加入する。「また新外国人が入るし、競争は続きます」と危機感は強い。外野陣の競争に終わりはない。もちろん「リトル・ジャイアント」の進撃も止まらない。【栗田尚樹】

 ◆橋本到(はしもと・いたる)1990年(平2)4月28日、秋田県秋田市生まれ。仙台育英では甲子園出場。小学6年時に遠投100メートルを投げていた強肩。08年ドラフト4位指名。年俸1400万円(推定)。172センチ、75キロ。右投げ左打ち。独身。