<ロッテ3-1オリックス>◇23日◇QVCマリン

 ロッテ里崎智也捕手(37)は「その時」が来たと思った。自分の存在意義はこの日にあると思ってマスクをかぶった。先発の古谷をリードし、覚悟を持ってペーニャの内角を突いた。7回1死三塁からの適時打も、内角球を右前へ決め打ち。強い思いでバットを振った。

 この日は、チームが立ち直るための大切な試合だった。前夜22日は、伊東監督が「ワーストゲーム」と評する試合。2死から四球を連発し5失点して負けた。試合後、監督はルーキー捕手の吉田を監督室に呼び寄せ、緊急指導した。一人前に育てたい捕手が、折れそうになっていた。

 吉田を育てながら勝つ。それはチームの未来にとって必要なことだった。伊東監督は今季、可能な限り吉田にスタメンマスクをかぶらせてきた。その状況を里崎はある覚悟を持って受け入れていた。

 里崎

 監督が吉田を使うのは当然のこと。伊東さんがロッテに来たからには、次の捕手を育てるのはテーマだと思うから。だったらオレが元気なうちに吉田には一人前になってもらいたい。苦しい時には、オレがいるって言えるうちに。だから、その時に恥ずかしいプレーをしないよう、ちゃんと準備しておかないといけないと思ってる。

 その覚悟が生きた。伊東監督にも伝わった。「今は毎試合出る感じでもないのに、常にしっかり準備してくれている」とたたえられた。

 里崎は吉田をポジション争いのライバルではなく、後継者だと認めていた。だから自分が出場機会を失う状況にも冷静でいられた。「周りから、なんでそんな神様みたいな考え方なの?

 って言われました」と笑う。今後何年も自分がマスクをかぶれるわけではない。チームを思う気持ちが、悟りのような心境に至らせた。【竹内智信】