<西武5-9日本ハム>◇1日◇西武ドーム

 借金を背負うチームに救世主が現れた。5年目の日本ハム市川友也捕手(28)が、西武戦でプロ初安打を含む4打数2安打1打点で、5カードぶりの勝ち越しに大きく貢献した。話題のテレビドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」に登場する、社会人野球チームのモデルとされる鷺宮製作所出身。巨人では芽が出ず今季移籍した苦労人が、新天地で結果を残した。

 ドラマチックだった。懐かしい空気を吸った苦労人捕手が、逆転劇の主人公だ。市川が「負債」を抱えるチームに、再建の息吹を吹き込んだ。プロ初安打から2安打&移籍後初打点。今季2試合目の先発出場で初のヒーローインタビューの座も射止めた。マイクを前に緊張からか、ろれつが回らない。「5年目で打ってなかったので重圧を感じてました」。3点を追う、劣勢の3回。大逆転劇の火種をつくった。三遊間をゴロで抜く左前打。巨人から足掛け5年目、15打席目でのプロ初安打で肩の荷は下りた。

 得点にはつながらずも、全員一丸のファイティングポーズの姿勢が生まれた。乱戦を攻守に脚本。4回の第2打席。1点差とし、なお無死一、三塁。前打席で節目を刻んだ勢い。詰まりながら左前へ落とす執念の同点打で移籍後初打点を挙げた。一塁側ベンチを再燃させ、今季最多6点のビッグイニングへ誘った。栗山監督は「感動は推進力!」とたたえる、みんなの胸を打つ働き。今季わずか2試合目の先発出場で、女房役としても効いた。初回3失点と乱調の吉川を苦心のリード。今季初勝利へ導いた。

 旬が到来の予感だ。社会人野球・鷺宮製作所の出身。TBS系ドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」の原作でモデルとされるチームから09年ドラフト4位で巨人入団。東海大相模-東海大と直系の先輩・原監督の下で正妻を夢見たが、かなわなかった。阿部らの分厚い壁。昨オフ、金銭トレードで日本ハムに移籍した。昨年10月に誕生した長男、さやか夫人とは離ればなれの生活。「しょうがないです。仕事ですから。僕が頑張らないと」と腹をくくり、新天地にかけてきた。

 運命の地で、野球人生は変わった。西武ドームは、鷺宮製作所時代を過ごした埼玉・狭山とほど近く、目と鼻の先。同球場でプロ初スタメンでの奮闘も、何かの縁だったのかもしれない。「第3捕手」でチャンスをじっと待ち、野球に没頭する日々が報われた。4月27日のドラマの第1話は見逃してしまったが「次からは見ますよ、絶対」と発奮材料の1つだ。中田と西川の1発あり、大谷の連日の巧打あり。市川は「こんな幸せはない」と感慨に浸った。役者そろい踏みの中で、主役級の仕事で快勝を引き立てた。【高山通史】

 ◆ルーズヴェルト・ゲーム

 池井戸潤氏による小説で、4月からTBS系でドラマが放送されている。タイトルは米大統領ルーズベルトの「野球で一番おもしろいのは8対7だ」に由来。中堅精密機器会社の存亡と、会社が所有する名門社会人野球部の廃部を賭けた攻防戦を描く。唐沢寿明が青島製作所の社長役として主演を務める。