<中日5-9巨人>◇3日◇ナゴヤドーム

 ようやく出た。巨人阿部慎之助捕手(35)が、今季97打席目にして初適時打を放った。慢性的な首痛をおし「6番捕手」でスタメン出場。2死満塁で迎えた1回の第1打席、左翼線に先制の2点適時二塁打。この回打者11人、6点のビッグイニングとした。チームの貯金は今季最多の7で2位浮上。原監督から「小さなおむすび」とハッパを掛けられた、不死身の主将を旗振り役に、9連戦を力強く滑り出した。

 向かってくる中日岡田のシュートをにらみつけた。阿部はでっかい体とボールの間、ごく狭い空間にバットを出し、ラインを合わせていった。痛い首は体と一緒に回さず、懸命に残し、シュートをにらんだままだった。バットと体の距離が取れた。「いいところに飛んでくれた」は謙遜で、いいところに飛ばす打撃だった。開幕から97打席目の適時打は、プロ14年目で最長のトンネル。1回2死満塁、左翼線への先制二塁打で華麗に抜け出した。

 うつむいていた。「遅すぎるよ。それより」と殊勲打について興味なかった。6点の貯金を吐き出しかけた1回裏の5失点が、捕手として許せなかった。「しっかりリードしなくては。反省しなくては。話し合って、また頑張るよ」と静かに言った。開幕から1カ月、逆境の中で「反省」という言葉の意味を学んでいた。

 4月27日の広島戦。0-0の延長11回だった。4番エルドレッドにサヨナラ3ランを打たれた。勝負と敬遠の方針をハッキリ決めなかった。カウント0-2となり、三振を狙った山口のスライダーが、甘く入った。2日考えても足りなかった。「マイナス方向にいっている時に、いかに突き詰めて反省するかが大切だと思った。負けっぱなし、マイナスにいきっぱなしじゃ、ズルズルいっちゃう。悪い時こそ、とことん考えて、原因を追究して、最善を尽くす」と思いの丈を吐き出してから取った行動は、意外なものだった。

 「やることを全部やる。だから行って来るわ。特打」。首の痛みがたまらなくなった4月29日から逆に、早出の特打と練習を欠かしていない。打撃投手に「打たないのはオレの調子が悪いから。申し訳ない。気にしないで、思いっきり投げて」と謝りながら振り込んだ。反省は困難を乗り越える力になる。阿部がまた痛みに勝った。【宮下敬至】

 ◆慎之助「不死鳥列伝」

 数々の負傷に見舞われながら、驚異の回復力で乗り越える。当然、精神力の強さも源だが、阿部の口癖に、その秘密が隠されている。「僕の体は医学の世界でも、解明できないと思う。他の人が3カ月かかるところを1週間で治しますから」と笑う。今回の首痛も「患部に注射を打って、良くなった」と言うが、回復力はすさまじかった。

 過去を見ても、そうだった。08年の西武との日本シリーズ。リーグ優勝を決めた10月10日のヤクルト戦で右肩を負傷。右肩関節挫傷の診断だったが、11月1日の第1戦に代打で出場。第4戦には指名打者でスタメン出場し、第5戦はソロ本塁打を放った。昨年のWBCでは右膝痛で直前の強化試合を欠場するも、初戦のブラジル戦に代打で出場。痛烈な内野ゴロで決勝点を奪った。

 ◆原監督の「小さなおむすび」発言

 名古屋に移動した2日、原監督が不調の阿部について「まだ、小さなおむすびだね。パクッと食べられちゃうくらいでしょ」とコメントし、奮起を促した。