<広島5-2DeNA>◇4日◇マツダスタジアム

 16年ぶりの快速20勝じゃけえ!

 広島のエース前田健太投手(26)が8回2失点で3勝目を挙げ、チームを両リーグ最速20勝に導いた。98年以来となる両リーグ20勝一番乗り。30試合目での到達も球団史上3番目のスピードだ。打線は6番松山が一時は逆転となる3号2ランを放ち、7番木村が決勝打。5月も首位快走してみせる。

 7回を投げ終えた直後、前田は一塁ベンチで83という球数を聞いて驚いた。「調子が悪い時は、球数以上にボールを投げている気がする」。そんな状態でも決して試合を壊さなかった。

 1回表、1番石川への2球目チェンジアップが甘く入り、いきなり右翼席に先頭打者弾をたたき込まれた。ゴールデンウイークの真っただ中、超満員3万1800人の観衆がどよめいた。「球場が盛り上がる中で雰囲気を悪くしてしまった」。珍しくスライダーが抜け、チェンジアップが浮く場面もあったが、2回以降は緩急巧みに的を外した。8回98球で3安打2失点の省エネ投球。レッドソックスのスカウトがバックネット裏からスピードガンを構える中、底力を見せた。

 2日前の2日夜。自宅でロッテ西武戦を「7回ぐらいから」テレビ観戦し、西武岸のノーヒットノーランを目に焼き付けた。自身も12年4月6日DeNA戦で同じ快挙を達成したが、「もう遠い昔なんで。1回やったら、もう無理です」と笑顔で言い切った。

 「僕は基本的に(記録を)狙わない。むしろ打順の巡り合わせとかも考えて、ランナーを出したい時があるぐらいです。苦手な打者を回の先頭で迎えるより、2死走者なし、2死一塁で迎えたいとか。もちろん、ヒットを打たれたいわけではないんですけどね」

 目先の戦いだけでなく、先の展開もみすえて投球する。打者に勝ちたいという本能以上に、チームが勝つためのゲーム作りを最優先している証拠だ。この日も当たり前のように試合を作った。右肘の張りを訴え5回降板した4月12日中日戦以来の白星で、チームを両リーグ最速20勝に導いた。

 試合後、観客から30センチほどの小さな鯉のぼりを贈られ、ポケットにしまった。今日5日は「こどもの日」だ。「たくさん勝ち試合を見せていきたい。プロ野球選手に憧れるような試合をしていきたい」。子供たちに誓った。鯉のぼりは5日で片づけることになるが、14年野球界を席巻するコイは、まだまだ高くのぼっていく。【佐井陽介】

 ▼広島が98年以来16年ぶりの両リーグ20勝一番乗り。同年5月9日に到達した時点では、新人の小林幹がリーグ最多の5勝。打線は緒方、前田智、江藤、野村、金本らが主軸。また、広島のセ・リーグ20勝一番乗りは9度目。過去8度のうち、4シーズンの優勝を含みAクラス7度(ほかに2位1度、3位2度)で、Bクラスは98年5位の1度だけ。30試合目での到達は89年25試合目、98年28試合目に次ぎ球団3番目の速さ。5月4日到達は最速。