<オリックス0-5日本ハム>◇9日◇ほっともっと神戸

 日本ハム栗山英樹監督(52)が、苦心あり工夫ありの采配で連敗を止めた。オリックス戦で、4番中田を4試合連続で指名打者で起用。打撃好調の大谷のスタメン起用を見送り、内野手の西川を今季初めて左翼で使った。積極的な若手登用を図りながら、大胆な策も打ち出し、金子を攻略。チーム一丸で3試合ぶりに順位を3位に上げた。

 神戸の涼しい夜風に、火照った全身を委ねた。苦難の激闘を制した。栗山監督が、物思いにふけった。選手の大半が既に乗り込み、宿舎への帰路へ急ごうとする大型バス。タラップの前で足を止め、少したたずんだ。「選手を躍動させるのが、オレの仕事だから」。沸点に達したジレンマを打ち破った。秘めた興奮をクールダウンさせた。

 苦心の采配だった。試合前練習後、本音を漏らした。「オレだって、本当は苦しいんだよ」。先発メンバーから、野手で出場準備が万全の大谷を外す選択をした。オリックス先発は金子。攻略の先頭に立つはずのチームNO・1左打者のベンチスタートを選択した。「無理をするところ(時期)じゃない」。忍耐のみがバックボーンだった決断には、深い理由があった。

 カギはコンディション不良を訴えている中田。4試合連続で指名打者で起用した。守備の負担を軽減する苦肉の措置。今季の大谷は投手偏重での育成方針のため、野手出場の定位置はDH。中田の事情による“玉突き”で先発見送り、代打待機になった。規定打席未満も打率3割7分9厘の強打者を温存。西川を、今季初めて外野手の左翼へ配置した。中田の「代役」で守備位置を埋めた。昨季経験はあるが突貫工事。難産で9人の打線を構成した。

 7回。3打席連続三振していた中田が応えた。「集中していた」。1死一塁から右前打。一、二塁とつないだ直後にミランダが右前適時打。貴重な追加点が生まれた。世代交代の節目の1年。栗山監督は勝ちながら、負けながら、次世代を育てる。「選手が悔しがって、怒って…。それでも成長していってくれればいいんだよ」。創意工夫と自在のタクトで、預かる就任3年目の日本ハムを成熟させていく。【高山通史】