<ソフトバンク6-1ロッテ>◇2日◇ヤフオクドーム

 ソフトバンク帆足和幸投手(34)が6年ぶりに開幕5連勝と強い。ロッテを6回3安打1失点。6月からツーシームを本格的に復活させ元来のスライダー軌道との相乗効果を高めた。ベース上に描く「八の字」が広がり、勝負を有利に運べている。右打者への被打率2割2分7厘は左打者より1割も低く抑えている。技巧派が威力を発揮し首位と再び1・5ゲーム差とした。

 勝っても負けても表情は変わらない。喜びは一瞬。帆足は「また来週も試合です」と次に勝つための計算を始めていた。球速勝負をしない左腕はいつも考える。「今までいっぱい打たれたからです」。開幕5連勝を飾ったロッテ戦もそうだった。

 1つはここ3試合で多投するツーシーム。「右打者の外を狙ってカンカン打たれていた」と6月から本格復活。従来のシュートより指1本ほど開いた。「真っすぐいくか、少し落ちる。球速も130キロ出ています」。これが低めのコースでいい働きをする。「右打者の外、左の内角に勝負どころで投げ、ほんの少しずらして打たせればいい」。

 ロッテ打線は右打者7人をズラリ。「左腕に右」の定石は新しい武器を手にした帆足にはプラス作用。サイドスローで元来直球もカット気味で、スライダーを持ち味にする。外に逃げて沈むツーシームと長所を引き立て合い、5回まで的を絞らせず、二塁を踏ませない。内角攻めの後に外のツーシームで空振り、打ち損じを誘った。この結果、今季被打率は右打者が2割2分7厘、左が3割2分8厘。数字が強さを語っている。

 ハフマンに先制ソロを許した6回。1死から内角を厳しく攻めた結果、3四死球で満塁とした。「ホームランはショックが大きかった」と言うが、直後に松田の好守でクルーズを三直。今江はツーシームとスライダーの「八の字」攻めで追い込み、最後はツーシームで空振り三振。最大のピンチをしのいだ先に、打線の逆転が待っていた。

 ロッテの4番サブローは「内角が真っスラ(自然と曲がる直球)してくる分、あの球が利いていた。年々腕が下がっているのもある」と帆足の進化を語る。リリースポイントの下降はサイドスローが生む八の字を“末広がり”なものにした。もっとも、苦手意識のある帆足はセットポジションの構えをベルト付近から、宙に浮かすなど1球ずつ変化させるサブロー対策で対抗していた。「工夫をしないと勝てないんですから」。この日の最速は134キロ。間合いの奪い合いで先んじる術も勝ち続ける理由である。【押谷謙爾】