<巨人4-3中日>◇4日◇東京ドーム

 これぞミスターの一振り!

 試合前に、巨人OBの長嶋茂雄終身名誉監督(78)がOBで400勝投手の金田正一氏(80)と1打席限定で対決。ミスターは58年のデビュー戦で4打席連続三振し、名勝負を繰り広げた好敵手に対し、3球目を左手1本のスイングで遊ゴロへ打ち返した。球団創設80周年を彩る記念イベントに花を添えた。

 半世紀の歳月が流れても、変わらない魂のフルスイングだった。4打席連続三振の初対決から56年、そして最後の対戦となった64年から50年後。ミスターがカネやんと再び対峙(たいじ)した。1球目は低めのボールを見逃し、2球目は空振り。周囲の熱が高まる中、3球目の高めの球を左手1本で金田氏の左へ打ち返した。結果は遊ゴロだが、ノスタルジックな対決は結果を超越していた。

 長嶋氏

 投手の頭を越す打球を打つつもりだったけど、遊ゴロだったね。でも自分ではいい当たりだったと思っています。

 長嶋氏は今も脳梗塞からのリハビリを地道に続け、金田氏は「長嶋が打席に立つなら私にもプライドがある。プレートから投げる」と晴れ舞台のためにジャイアンツ球場で投げ込んだ。対決が始まる前に金田氏が確認すると「危ないから近くでやりましょう」。金田氏も万が一の制球ミスを心配していたため「2人の意見が初めて合った」と同意し、マウンドを下りて投げた。

 昨年5月5日の国民栄誉賞のセレモニーで、長嶋氏は愛弟子の松井秀喜氏と1球限定で対決。内角高めの球を空振りし「顔のあたりに来て打てなかったけど、いい球だったら、打っていたと思う」と悔しさをにじませていた。以降、毎週土曜日は自宅近くの公園で20スイングを振ることを日課とした。この日は昨年同様の約600グラムの軽量バットだったが、練習時は通常の重さの物を振り込んだ。たゆまぬ努力は現役時さながらだった。

 2年越しの絶好球を逃すはずがなかった。「金田さんは一生懸命、投げてくれた。打たせようという気持ちが顔に出ていましたし、私もいい打球を打ちたいという気持ちでした」と思いに応えた。金田氏も「当てさせるのが難しい。私のコントロールもまだ生きている!

 ワッハッハ!」と豪快に笑った。

 球団創設80周年の記念事業の1つとして行われ、対決前には故沢村栄治氏の長女、酒井美緒さんらが歴代ユニホームを着て登場した。歴史が脈々と受け継がれているからこそできる巨人の式典。「たくさんの歓声が聞こえてありがたかった。今日はいつもと違う独特の歓声でした。こういう場を設けていただきありがたいです」。打った瞬間、ミスターは「当たった!」と声を上げた。いつまでも野球への情熱と感謝を忘れない男に、感動の瞬間が舞い降りた。【広重竜太郎】

 ◆長嶋茂雄(ながしま・しげお)1936年(昭11)2月20日、千葉県生まれ。佐倉一高-立大を経て58年巨人入団。1年目に本塁打王、打点王、新人王。59年の天覧試合(対阪神)で同点本塁打とサヨナラ本塁打。王貞治との「ON砲」で65~73年の巨人V9を支えた。74年引退。通算打率3割5厘、444本塁打。MVP5度、首位打者6度、本塁打王2度、打点王5度。背番号3は永久欠番。88年野球殿堂入り。

 ◆金田正一(かねだ・まさいち)1933年(昭8)8月1日、愛知県生まれ。50年、享栄商を中退して国鉄入団。51年からは14年連続20勝。64年暮れ、当時のB級10年選手制度の権利を行使し巨人移籍。現役通算20年間で400勝、奪三振4490、完投365などのプロ野球記録を残した。巨人の背番号34は永久欠番。88年野球殿堂入り。<長嶋対金田アラカルト>

 ◆初対戦

 58年4月5日巨人-国鉄(後楽園)の開幕戦。立大から入団したルーキー長嶋は3番三塁で出場。国鉄のエースで既に8年で182勝の金田は、4打席連続で空振り三振を奪った。19球でバットに当たったのは第2打席の3球目のファウルだけ。翌日の8回1死二、三塁でも空振り三振。初対戦から5打席連続空振り三振。

 ◆初本塁打

 初安打は同年4月19日、9打席目で左前打。初打点は翌20日、10打席目。初本塁打は7月1日、23打席目に左翼へ2ラン。1年目は28打数5安打、打率1割7分9厘。

 ◆2年目以降

 対戦2年目の59年は開幕戦で本塁打。59~61年まで3年連続で対戦打率は3割超え。61年は年間6本塁打。

 ◆2年連続サヨナラ本塁打

 62年5月8日(富山)では長嶋が7回に同点弾、14回にサヨナラ本塁打。63年8月7日も11回にサヨナラアーチ。

 ◆通算対戦成績

 64年まで7年間で211打数66安打(打率3割1分3厘)、18本塁打、35打点、31三振。金田が許した本塁打は379本だが、打者別では長嶋の18本が最多。長嶋の通算本塁打は444本だが、投手別では金田からが、村山(阪神)の21本に次いで2番目に多い。