<DeNA0-3阪神>◇5日◇横浜

 虎の若い力が、4連勝をもたらせた。阪神先発岩崎優投手(23)が序盤のピンチを乗り切ってDeNA打線を7回無失点。4月24日以来、7試合ぶりの3勝目を手にした。リードした梅野との新人バッテリー勝利は、御子柴-木戸以来、実に31年ぶり。今季9度目の完封で2カード連続勝ち越しを決めた。7月の虎は希望に満ちあふれている。

 こわばった表情が一瞬にして崩れた。岩崎は最終回、ベンチからピンチを背負う呉昇桓を見つめていた。プロ最多131球、自己最長タイの7回を投げ、託した勝利のバトン。4月24日中日戦以来、7戦ぶりの3勝目が確定すると、ほっと息をついてハイタッチの列に加わった。

 「(投球が)思ったところにコントロールできてなかった。とにかく全力で腕を振ることを考えた」

 心はいつも通り冷静に。ただ、投球時には顔を紅潮させながら、次々と真っすぐを投げ込んだ。立ち上がりから生命線であるコントロールに苦しんだ。3回2死からは3番グリエルに高めの137キロ直球を二塁打された。それでも「自信のあるボールで勝負したかった」。普段の丁寧に打たせる投球が一変。直球重視を貫いた。続く4番筒香には全球直球勝負。4球目の138キロで空振り三振を奪い、ピンチを脱した。スピードガンでは計れない直球の質。DeNA中畑監督をも「大人びた投球をしている。気迫のこもったピッチングだった」とうならせた。最大の危機だった4回1死一、三塁。スクイズを試みた8番黒羽根が136キロをファウルにしたシーンがその象徴だった。

 1日違いで里帰り登板はならなかったものの、前日4日は故郷・静岡でDeNA戦が行われた。移動日の3日には実家に直行。家の畑で収穫したトマトを朝から煮込んで、母恭子さん(51)が待っていた。特製のミートスパゲティが何よりうれしかった。野球の話はせず、弟とは趣味のゲームの話でリラックス。ごく普通な、実家での一晩が気持ちをリフレッシュさせた。

 「(1勝は)うれしいですけれど、これで終わらないようにしたい」

 勝ちがつかなかった約2カ月半。周囲の心配をよそに「そもそも実力がないと思っているので。登板と登板の間はマイナスのことばかり考えています」と明かしたが、7回8奪三振無失点の力投に陰の部分は見えなかった。梅野と新人バッテリーでチームを4月22日以来の4連勝に導いた。「これからもたくさん勝っていきたい」。その顔には「やれる」手応えがにじんでいた。【松本航】