<ヤクルト5-4中日>◇8日◇神宮

 中日吉見一起投手(29)が右肘手術を乗り越え、1年2カ月ぶりに1軍マウンドに戻ってきた。5回6安打3失点。7回に3番手浅尾が逆転を許し復活の白星こそ逃したが、力強いフォームから73球を投げた。次回は球宴前最後のカードとなる14日からの阪神3連戦に先発することが濃厚。5連敗と苦しむ中日だが、復活したエースが逆襲を導く。

 試合後の三塁側スタンドから歓声と拍手が自然と起こった。「吉見~、お帰り~!」、「これからは頼むぞ!」。いつもなら怒号が浴びせられる敗軍の列。この日の竜党は温かかった。「振り返ると長いようで早いです。いろいろあったんで…」。実に427日ぶりの1軍登板。吉見はしみじみと振り返った。

 まさかのスタートだった。1回。先頭山田に2球目の内角直球を左翼スタンドに運ばれた。外寄りに構えた捕手のミットとは違う逆球。3回に武内、5回には山田に2本目となる本塁打を許した。抜群の制球力を誇った本来の姿にはまだ遠い。それでもマスクをかぶった谷繁兼任監督は待ち望んだ男の復帰を「らしい投球。失投をホームランにされたけど」と喜んだ。

 折れそうになる心を支えてくれたのは家族だった。昨年6月に受けた右肘内側側副靱帯(じんたい)の再建手術。直前に4歳と2歳になる2人の息子から家族全員を描いた似顔絵をプレゼントされた。術後は右手がパンパンに腫れ、右肘を固定しながらの生活。聡子夫人がいなければ、乗り越えることができなかったプロ野球人生最大の壁だった。「感謝の気持ちと投げられる喜びを感じて投げました」。73球で5回を投げきり、勝利投手の権利も手にした。「感謝」という言葉を何度も繰り返した。

 救世主になり得る。いや、なってもらわないと困る。チームはそんな苦境に陥っている。前半戦ラストとなる9連戦の初戦に痛すぎる逆転負け。今季ワーストタイの5連敗で、借金も4まで膨らんだ。首位巨人とは9・5ゲーム差にまでなった。復帰戦は5イニングで降板した吉見だが、次回登板は制限なしでマウンドに上がる。エースがフル回転の働きをしない限り、大逆転Vも見えてこない。【桝井聡】<中日吉見の経過>

 ◆13年5月7日ヤクルト戦(神宮)

 右肘の違和感を訴え途中降板。翌8日に出場選手登録抹消。

 ◆同6月4日

 名古屋市内の病院で右肘内側側副靱帯(じんたい)再建手術。

 ◆14年2月15日

 春季キャンプで9カ月ぶりに投球練習。

 ◆同5月1日

 ウエスタン・オリックス戦(ナゴヤ)

 手術後初の実戦登板。1イニングを3者凡退に抑える。

 ◆同8日

 腰の違和感を訴え、次回登板を回避。

 ◆6月11日

 ウエスタン阪神戦(ナゴヤ)

 2イニングを2安打無失点。

 ◆同18日

 ウエスタン・ソフトバンク戦(雁の巣)

 今季初先発。右太ももをつり、3回3失点で降板。

 ◆同27日

 ウエスタン・オリックス戦(ナゴヤ)

 今季最長の6回を7安打4失点。