<ヤクルト4-7中日>◇10日◇神宮

 雨ニモマケズ-。ガッツが決めた。中日小笠原道大内野手(40)が移籍後初の決勝打だ。1点リードされた7回1死満塁の場面で代打出場し、中前へ2点適時打を放った。6月28日阪神戦(甲子園)から代打で6打席連続出塁と勝負強さを発揮。台風8号が近づく神宮で、15泊16日の長期ロードを白星で締めくくった。

 ずぶ濡れの背番号36が集中力を研ぎ澄ませた。出番はいつものように勝負どころでやってきた。1点をリードされた7回1死満塁。代打で打席に向かうと、ヤクルトベンチは山本哲に代えて左のルーキー岩橋をマウンドに送った。必死だった。ファウル、見逃しでいきなり2ストライク。そこから何とか食らいつき9球目だ。

 「みんながつくってくれたチャンスだった。かえせてよかった。代打なんでいろいろ考えていると終わってしまう。ピッチャーが投げた球に集中して、本当に気持ちだけでした」

 両脇を締め高めの直球を振り抜いた。打球はセンター前に転がると、雨ですべった中堅手が後逸。走者3人が一気に生還した(記録は2点適時打)。前夜に2本のアーチをかけた森野。翌日の殊勲者は名球会メンバーの小笠原だった。2日連続となった雨中の試合。プロ18年生の集中力が連勝を呼び込んだ。谷繁兼任監督も「決めるところで決めてくれた」と褒めちぎった。

 スタメン出場は6月9日の日本ハム戦が最後だ。そこから代打稼業に専念している。それでも「どっちがどうということはない。やることは変わらない」と準備は怠らない。誰よりも早く試合前の球場に来ると、入念に体幹を鍛えるトレーニングを行う。その姿勢は誰もが尊敬のまなざしを向ける。前日9日の試合前にはベンチで堂上直から打撃の助言を求められた。試合開始が遅れたこともあり、身ぶり手ぶりで熱血指導した。

 その存在感はシーズンが進むにつれて増している。代打起用に応え、6月28日阪神戦から代打6打席連続出塁、7月に入って4打数4安打だ。打率も3割を超えた。6月下旬の甲子園から始まり金沢、富山、東京ドーム、神宮と続いた16日に及ぶ長期ロード。最後に待っていたのは嵐の神宮だった。「きのう、きょうと悪天候の中で、応援してくれたファンに勝利を届けることができたんでよかった」。40歳ガッツが魂のフルスイングで勝利をたぐり寄せた。【桝井聡】