<オールスターゲーム:全パ0-7全セ>◇第1戦◇18日◇西武ドーム

 赤ヘル軍団が躍進した。マツダオールスターゲーム2014は18日、西武ドームで第1戦が行われた。試合前のホームラン競争を制した全セの広島ブラッド・エルドレッド内野手(34)が、右中間への1発など3安打4打点と大活躍しMVPを獲得した。両チーム初安打は3回の堂林翔太内野手(22)、先制タイムリーは初出場の菊池涼介内野手(24)。さらに先発の前田健太投手(26)も球宴3勝目と、最多8選手が選ばれた勢いそのままに、広島勢が球宴を盛り上げた。

 数十秒前は痛みのあまり、ガクンと地面に座り込んでいた。なのに、だ。エルドレッドはクロッタの外角151キロ直球を軽々と右中間席まで運び、全力ダッシュを必要としなかった。

 「当たった瞬間はかなり痛かったけど、痛みは引いたから大丈夫だよ」

 4点リードの7回2死二塁、左足首に自打球を受けた直後、試合を決める2ランを放った。3安打4打点でMVPを受賞。「キャリアの中でも特別な1日になった」。左足首をアイシングしながら笑顔を見せた。

 「バントヒットを狙うよ」との宣言はやはりフェイクだった。少年時代はブレーブスの主軸を務め、通算398本塁打を記録したデール・マーフィーの特大アーチに憧れた。「球宴の本塁打競争ではマグワイアやソーサが1回で15発ぐらい打つ姿を楽しんだよ」。29発、80打点でキングを独走中。試合前の本塁打競争ではバレンティンら強敵を抑えて優勝していた。

 飛ばし屋の血が騒いだ主砲に導かれ、カープ旋風が吹き荒れた。開幕からの快進撃と「カープ女子」が注目された結果、8人がファン投票で選出された。第1戦はスタメン10人のうち6人がカープ戦士。0-0の3回1死、8番堂林が両チーム初安打で口火を切った。球宴9打席目で初安打となる左前打。2死一、三塁となり、今度は2番菊池が先制の中前適時打。こちらは球宴初出場2打席目での初安打。「大きいのは打てない。渋く打てて良かった」と喜んだ。

 菊池は西武鉄道沿線の東京都東大和市出身。小学生だった99年、西武ドームで球宴を生観戦した。「20分あれば家に帰れる距離ですから。レフトポール際で見ていたら、(当時巨人の)二岡さんがボールを投げ込んでくれて、父がキャッチした記憶があります。まさか、こんなところでプレーできるなんて…」。地元選手が2安打2得点1打点。先発前田は3回無失点と好投し、堂林は2安打、丸も1安打。一岡も球宴デビュー戦を無失点で終えた。

 カープ勢が球宴をジャックし、野村監督はご満悦だ。「良かった、良かった。後半戦も頑張るというメッセージになった」。前半戦を3位で終えたが、目標はあくまで23年ぶりのV奪回。試合後、後半戦の巻き返しを期待するかのように、西武ドームに広島のヒッティングマーチが流れ続けた。【佐井陽介】

 ▼初出場のエルドレッドが本塁打を含む3安打、4打点でMVP。球宴デビュー戦で本塁打を含む猛打賞は、68年<1>戦ロペス(東京)78年<1>戦ギャレット(広島)92年<1>戦田辺(西武)に次いで4人目だ。エルドレッドはいきなり4番で出場。初めて4番を務めた試合で本塁打を含む猛打賞は球宴史上初めてになる。なお、広島の外国人選手のMVPは78年<1>戦ギャレットに次いで2人目。

 ◆球宴の赤ヘル旋風

 75年第1戦(甲子園)で全セの3番山本浩、6番衣笠がそろって2打席連続本塁打。2人で4発7打点をマークした。チーム11安打のうち山本浩3本、衣笠2本、大下1本と、広島勢で6安打。投げては外木場が2番手で3回を無失点。広島はこの年からヘルメットの色を黒から赤に変え「赤ヘル旋風」を巻き起こした。前半戦は今季と同じリーグ3位で折り返し、球宴後も好調を続け悲願の初優勝を成し遂げた。

 ◆広島勢の球宴最多安打

 広島勢は計8安打(エルドレッド3、菊池2、堂林2、丸1)。球宴の同一チーム合計安打では94年<1>戦のダイエー勢、01年<2>戦のヤクルト勢が各11本を打っているが、広島勢の8本はチーム史上最多。過去最多は75年<1>戦(山本浩3、衣笠2、大下1)79年<1>戦(山本浩3、高橋慶2、江夏1)95年<2>戦(野村2、江藤2、金本2)の各6本だった。