<ソフトバンク4-3ロッテ>◇21日◇ヤフオクドーム

 ソフトバンクが後半戦白星スタートを切った。1点を追う6回、代打松中信彦内野手(40)が同点犠飛、続く中村晃外野手(24)が勝ち越し打。今季3戦2敗だったロッテ石川を攻略し、1分けを挟む3連敗を止めた。前カードは死球を巡って乱闘寸前、監督同士の言い合いに発展。本拠地に戻っての“遺恨戦”を逆転で制し、留飲を下げた。

 万雷の拍手がヤフオクドームに響く。松中は応えた。6回1死二、三塁で、ルーキー石川の直球を軽々と左翼へ同点犠飛。さらに増した歓声を背負って一塁ベンチに戻ると、今度はハイタッチが待っていた。

 「久しぶりのドームだったし、あれだけの声援を聞いて、何とか打ちたいと思った。(1軍復帰後)3打席の状態も良かったし、自信を持って立てた」

 本拠地の打席は5月6日以来。今月12日の1軍復帰後に言っていた。「今の俺はヤフオクドームで声援を受けることが一番の楽しみなんだよ」。実際に浴びると、大ベテランは感謝の気持ちでいっぱいだった。

 「ここ1、2年は期待に応えられていないのに、たくさんの声援を頂ける。1打席1打席、恩返しする打撃をしたい」

 5月下旬の2軍降格後は「両目で球を見るため」とスタンスをややオープンに変更。石川が得意なシンカーを悠然と2球見逃し、3球目の初スイングで決めた。本拠地初打点。元3冠王は代打稼業になっても、勝負強さが体に染みている。

 同点劇に、続く中村もヒートアップ。松中への歓声に鳥肌が立った。「松中さんとファンの方が勢いをつけてくれた。ああいうベテランの方がベンチにどっしりいてくれるだけでチームは安心できる」。2死二塁で右翼への適時二塁打。試合前まで石川に打率1割2分5厘だった左打者が連続打点で、3戦2敗と苦手だった石川を攻略した。

 中村は松中が1軍だった5月まで、早出特打でよく一緒だった。ケージ越しにスイングを目で追った。「やっぱりすごいですよ。あの技術は」。強力打線の1番に定着した今も、尊敬のまなざしを40歳に向ける。

 球団恒例イベント「鷹の祭典」で客席は赤く染まった。6日前に千葉でロッテ伊東監督と言い争った秋山監督は、小さく息をついた。「楽な勝ち方はできない。また引き締めていかないと」。因縁の残り香が漂う両軍は、今後も熱戦を繰り広げそうだ。【大池和幸】