<ヤクルト3-2広島>◇21日◇神宮

 ド派手な1発も反撃届かず…。広島は4番ブラッド・エルドレッド内野手(34)が両リーグ最速で30号を決めたが、後半戦開幕試合でヤクルトに惜敗した。E砲は8回の2ランで猛追ムードを高めたが、序盤の拙攻が響いて1点届かず。2位阪神に2・5ゲーム差をつけられた。

 さあ、一気に逆転だ。コイ党のボルテージは最高潮に達していた。3点を追う8回1死二塁、4番エルドレッドが30号2ランを決めた。2番手カーペンターをマウンドから引きずりおろし、なおも1死で5番キラが3番手久古から三遊間にゴロを転がした。二遊間寄りに守っていた遊撃森岡は追いつくのが精いっぱいかと思われた。だがキラは走りだした瞬間に転倒し、ジョギングに近いスピードで一塁に走っていた。余裕のタイミングでアウト。反撃ムードは一瞬でしぼんだ。

 エルドレッドの1発はさすがだった。「バットの芯に当たって軌道も高かったからホームランになるとは思ったよ」。真ん中直球完璧にミートし、バックスクリーン左にたたき込んだ。広島選手の両リーグ30号一番乗りは19年ぶり4人目(5度目)だ。初出場した球宴は第1戦で2ランを含む3安打4打点と大爆発し、MVPを受賞。一方で自打球を左足首に直撃させていた。「腫れはあったけど、痛みは問題ないよ」。特大弾で不安を吹き飛ばした。

 ただ試合はあと1点が届かず惜敗。「負けたので素直に喜べないよ」。3点ビハインドを背負った直後の3回2死満塁では、小川の内角146キロを空振り三振していた。あそこで打っていれば…。表情に悔しさがにじんだ。3回だけではない。2回2死二塁、5回無死二塁、6回2死二塁の好機を逃し続けた結果の1点差負け。小川に7回無失点の好投を許し、野村監督は「ちょっと楽に投げさせてしまった。ヒットも塁に出た数もうちの方が多かったので、あと1本が出なかった」と嘆くしかなかった。

 「僕はチームの勝ちにこだわっているんだ」。エルドレッドは試合後、勝利にかける思いを何度も言葉にした。胸にたまったフラストレーションは、すぐに勝利という形で吐き出してしまいたい。【佐井陽介】

 ▼エルドレッドが両リーグ30号一番乗り。広島の選手の両リーグ30号一番乗りは78年ギャレット、79年山本浩、81年山本浩、95年江藤に次いで19年ぶり4人目(5度目)。広島のシーズン30本塁打到達は05年の新井(43本)前田(32本)以来9年ぶり。