勇気と希望を与える先発勝利を-。ソフトバンク大隣憲司投手(29)が24日、ヤフオクドームでの全体練習で1軍に合流した。国指定難病の黄色靱帯(じんたい)骨化症を発症した左腕は、27日のオリックス戦で手術後初先発に臨む。発症後に1軍勝利した投手はおらず、大事な首位攻防3連戦で前例のない奇跡に挑む。

 大隣は合流した全体練習の冒頭で、ナインから祝福の拍手を受けた。13日の日本ハム戦(札幌ドーム)は中継ぎとして408日ぶりの1軍復帰登板を果たした。今度は待望の先発マウンド。自然と言葉が弾んだ。

 「先発で戻ってきて、また気持ち新たにできるかなと思う。中継ぎと違う自分が出せればいい。違う緊張感もあると思うが、思い切っていくだけ」

 昨年5月31日以来の先発。しかも相手は首位争いをするオリックスだ。過去は6勝9敗と黒星先行も、手術と苦しいリハビリを経て生まれ変わった左腕に数字は関係ない。首位打者の糸井は近大の3学年先輩だが「打たれてるイメージはない。1人1人打ち取っていくだけ」と言い切った。

 同病などの手術を受けた楽天星野監督がこの日、現場に復帰。大隣も明るいニュースに刺激を受けた。

 「プロ野球界の中で立て続けに同じ病気の人が増えた。その中で復帰されたことがうれしいし、励みになる。逆に僕が戻ってきて、いろんな人の励みになればいい。そのためには結果を出すしかない」

 同病を発症後、1軍復帰したのは08年のオリックス宮本大輔だけ。勝利した投手はいない。白星が支えてくれた周囲への恩返し。そして、大きなメッセージになると信じている。

 首脳陣は球数やイニングを考慮する方針だが、自身は初回から飛ばしていくという。「あとは自分がつかむしかない。出遅れたぶん、後半戦だけでもしっかり1軍で投げたい」。真の復活に向け、第1歩を踏み出す。【大池和幸】