<楽天0-3ソフトバンク>◇30日◇荘銀・日新スタ

 首位を突っ走るソフトバンクに孝行息子が誕生だ。5月に育成から支配下登録された2年目飯田優也投手(23)が、待望のプロ初勝利をつかんだ。雑草左腕の5度目先発は楽天の注目ルーキー松井裕との投げ合い。自身最長の6回を3安打無失点とほぼ完璧な内容で制した。チームは2度目6連勝で、貯金を今季最多20と増やした。

 飯田は勝利のハイタッチで、仲間からグイッと背中を押された。松井裕から主役の座を奪った23歳は、自然と最前列に飛び出す形に。サファテからウイニングボールをもらい、色白の顔に笑みがこぼれた。

 「めちゃくちゃうれしい。さすがに5回もチャンスをもらったら、1回くらい勝たないと申し訳ない。自分のためにも勝てて良かった。要所で粘れたことが大きい。ボールは母親にプレゼントしたい」

 2回の無死二塁をしのぐと勢いづいた。5回は走者を背負って細川がマウンドに来た。「お前、肌白いのに顔が真っ赤やぞ」のひと言でリラックスできた。140キロ中盤の直球に、2種類のスライダーを駆使。昨オフのプエルトリコのウインターリーグで「制球が良くなった」というチェンジアップも効果的に決まった。4番ジョーンズを2三振と仕事をさせなかった。

 ここ2試合は5回2失点など好投も勝ちに恵まれず。ただ危機感はなかった。周囲からいじられ、逆に勝ってやろうという気持ちが増した。「先輩には持ってないなと、うまく笑いに変えてもらった。気負うことなく投げられた」。初めて訪れた山形で、堂々のマウンドさばきだった。

 母ゆきさん(48)は言う。「小さいころから人に惑わされない。怒る時は何時間もかけて伝えました。なぜ怒られたかしっかり説明しないと納得しない子だったので」。マイペースで物おじしない性格は今も同じ。松井裕との投げ合いにも「まったく気にならなかった」と自分の投球を貫いた。

 甲子園出場はない。神戸弘陵では控えだった雑草だ。転機が東農大北海道3年の時にあった。6月の全日本大学選手権2回戦の慶大戦に先発。初の神宮で、1死も取れずにKOされた。今も鮮明に覚えている。「勉強させてもらった。あれがあったから、より練習するようになった。自分に厳しくなった」。ウエートトレに励み、体のバランスが強化された。プロの道につながる敗北だった。

 育成入団後、支度金や多くない年俸で、育ててくれた大学に数十万円する打撃ケージを贈呈。一方で5月の支配下登録後は大型の外国車に買い替え、自分にプレッシャーを与えた。待望の初勝利。周囲へ最大の恩返しとなった。「やっと勝てた。これから積み重ねていきたい。まだ自分は負け越しているので」。他投手との兼ね合いでいったん登録抹消されるが、首脳陣の信頼はグンと上昇。頼もしい戦力が先発ローテに加わった。【大池和幸】<飯田優也(いいだ・ゆうや)アラカルト>

 ◆生まれ

 1990年(平2)11月27日、神戸市生まれ。神戸弘陵から東農大北海道。12年育成3巡目でソフトバンクに入団

 ◆兄弟

 昨年まで育成選手だった兄一弥(28)が2軍ブルペン担当。昨年3月6日の九共大との練習試合で初兄弟バッテリー。年が離れており、子どものころはあまりなかった

 ◆支配下登録

 今季2軍での7勝0敗が認められ、5月11日に支配下登録。背番号は131から42に。年俸600万円(推定)

 ◆好きな女優

 二階堂ふみが最近のお気に入り。「演技がうまい。できれば1度会いたい」。休日は出演映画やドラマ、インタビュー番組など見てリラックス

 ◆サイズ

 186センチ、88キロ。左投げ左打ち

 ▼ソフトバンクが4月10日西武戦から同19日ロッテ戦以来、今季2度目の6連勝。貯金20は今季最多で11年7月9日以来、4年ぶり。