<阪神5-4中日>◇21日◇京セラドーム大阪

 金田よチェスト行け~~~~っ!!

 阪神福留孝介外野手(37)は薩摩隼人(はやと)の血が騒いだ。1回の立ち合いで、故郷・鹿児島の後輩金田が2点の傷を負う。すぐに反撃した。2回1死一塁。2球で追い込まれたが、野武士らしく間合いをはかる。直後、内角低めの147キロ直球に鋭くバットを振り下ろす。高々と舞い右翼席へ。今季5号2ランの援護で勝負を五分五分に戻した。

 「追い込まれても、気にしていなかった。自然と体がうまく反応してくれた。鹿児島の後輩が投げているので援護できて良かった」

 薩摩では先輩が後輩を親身に教育する風習がある。福留の郷里は曽於郡大崎町だ。金田は隣町の曽於市出身。2月の沖縄キャンプ中には「鹿児島県人会」を催した。大和や榎田もいる。シーズン中も機会を見つけては、遠征先で食事に出かける。福留は「同じ県がこれだけ同じチームにいるのもなかなかない」と笑う。だから、後輩を気遣う。1回、被弾した金田がベンチに戻ると「緊張しているか」と声を掛けて、気持ちをほぐした。「ホームランを打たれて取れました!」と返事を聞くと安心した。

 薩摩は、かつて戦上手の武士がそろった。勝負師らしい読みも祖先譲りだ。カブレラは球威のある直球を多投。コーナーに制球して誰も手が出ない。福留には狙いがあった。1回、同じ左打者の今成を観察。内角ギリギリの直球で見逃し三振するのを見て確信した。

 「去年、何度か対戦してイメージを持てていた。角度があるのを意識していた。あの高い身長だし、高めの球に釣られるよりいい」

 薩摩を飛び出て、大男がそろう米国でも戦った。203センチの自信満々な剛速球を、豪快なフォロースルーで運び去った。今季、京セラドーム大阪で3発目。得意の戦場で勇壮だった。

 薩摩では肝が据わった猛者を「ぼっけもん」と呼ぶ。真剣の決闘で「チェスト!」と叫ぶ。幾多の修羅場を乗り越えてきた福留こそ、まさにその体現者だ。頂点に向かって、チェスト行け!【酒井俊作】